
ボーダレスグループで2018年度に立ち上がった事業の1つ、タベモノガタリ。在学中に創業するほど強い意志をもつ代表・竹下友里絵は、なぜボーダレスで起業することを選んだのか。その思いと背景を聞きました。
―社会問題に関心をもったきっかけを教えてください。
中学生のときに、英語の教科書で世界の問題を知ったことですね。なんとかしたいなと子ども心ながら思って、解決するなら国連だ!という理由で大学も選びました。
特に「食」に注目したのは、高校生でカナダに留学した時です。ホストファミリーが食べ残したものをどんどん捨てていく姿を見て、驚きました。世界の違う場所には食べ物がなくて死ぬ人がいるのに、アンバランスだと思ったんです。
―起業しようと思ったのは、いつ頃だったんですか?
もともと国連だJICAだと思っていたので、最初からビジネスに関心があったわけではないんですよね。ただ、NPO法人アイセック・ジャパンの活動でマーケティングやマネジメントを学ぶことも多かったですし、ICCというイベントで起業家の方たちが「ビジネスで社会を変えていく」ことを語っていて、その方法も良いなと思うようになりました。
もっと食にフォーカスして学びたくて、大学3年で神戸大学農学部に編入したんです。その中でビジネスの可能性に気づいたので、思いきって1年休学して、冷凍技術でフードロスをなくすことを掲げるデイブレイクという会社でインターンをしました。
できて間もないベンチャーで、事業の根幹に関わるようなこともたくさん任せてもらいました。実際にビジネスの現場で回していくことで、自分にもできるかもしれないと思ったんです。なので、休学が終わる3月に自分で会社を立ち上げようと決めて、まずタベモノガタリという団体をつくりました。
―タベモノガタリはどんな会社ですか?
私たちが実現したいのは、「世界人口を「おいしい!」で満たす」ことです。食べ物を余らせて捨てる人、食べ物が手に入らずに死んでしまう人。そんなアンバランスを解消したいんです。まずは、日本で食べ物がたくさん捨てられている状態を変えようと思っています。
日本のフードロスは農地や流通、飲食店、家庭と様々な場所で起こっていて、その総量は「日本人全員が茶碗1杯分の食べ物を毎日廃棄している」と例えられています。私たちは農地に注目しました。規格外だからという理由で出荷されない、また農作業の人手不足で収穫しきれずに廃棄される農産物を、独自の流通で消費者のもとに届けます。
この3月から兵庫県内の駅やニュータウンでプレ販売を始めて、4月から本格的に回していく予定です。
―最初からこのプランで考えていたんですか?
フードロスを解決したいという思いが出発点で、最初はフローズンフルーツを販売するモデルでした。初期投資が大きくて難しかったので、次は果物の加工を考えたんですね。地元の農家さんにいただいた桃でコンポートやジャムを作ってみたんですが…私には、加工は向いていなかったみたいです(笑)
神戸はスイーツの町ですし、美味しく調理してくれる人のところに、自分たちが加工用として販売するという案に着地しました。
実は、地元の果物ってなかなか地元に流通していないんです。安定供給を優先して市場の果物屋から仕入れることが多いので、地元で採れたものを地元に回していくのも良いなと思って。
このプランは、YYコンテスト(ユヌス&ユース ソーシャル・ビジネス デザインコンテスト)に出場してブラッシュアップをしていました。10月の最終発表で、優勝は逃したものの3つの企業賞をいただいて、その中の1つがボーダレス・ジャパン賞だったんです。
―もともとは、自分でそのまま起業しようと思っていたんですよね?
そうですね。プランを固めたり資金を得るためにコンテストに出ていたので、ボーダレスで起業する権利をもらっても即決はできなかったです。
果たして、自分のつくりたい世界観はそのまま実現できるのか。これまで自分たちを応援してくれた人の期待を、裏切ることになってしまうのではないか。グループの会社は福岡や東京に集中しているのに、自分は神戸でいきなり立ち上げられるのか。
そんな疑問がありました。
なので、まずはグループで起業した人たちの話を聞こうと思って、福岡でPOST&POSTの吉田さんやビジネスレザーファクトリーの原口さんに会いました。
―最終的には、何が決め手だったんですか?
自分の理想に向かう、一番の近道だと思えたからです。人生は短いわりにやりたいことが多すぎるので、1年でも早く進めたくて。そう考えた時に、事業に集中できる環境があるのが魅力でした。オペレーションはまだしもマーケティングの実践経験はなかったですし、確度を高めてもらえると思ったんです。
これまで事業ややりたいことの話をすると、八百屋は儲からないとかビジネス面で詰められることが多かったんですよね。でもボーダレスでは、なぜやりたいの?とか、その思い良いねって言ってもらえたんです。こういう環境なら、もし自分が明日交通事故で死んだとしても、大切に育ててきた事業を安心して託せると思いました。
―どんな人が、ここで起業するのに向いていると思いますか?
人生をかけて取り組みたい課題があるとか、幸せにしたい人がいるとか、そんなビジョンがある。でもどうやったら良いか分からない、という人ですかね。
起業家であるというところは独立して立ち上げてもここでも変わりませんが、良くも悪くも守られているので、その環境の中でもガツガツいける人だと、うまくインパクトを出せると思います。
―タベモノガタリが掲げる「世界人口を「おいしい!」で満たす」って、どんな世界なんですか?
最初の出発点が「世界には、食べられない人がいる」という問題意識でした。なので、貧困問題とや金銭的余裕がなくておいしいものが食べられていない人たちを「おいしい」で満たすのが、最も優先すべき私たちのミッションだと思っています。
もう1つは自分の体験からきています。一見自分のやりたいことを順調に進めてきたように見えるかもしれませんが、休学して上京したとき、特に母親は猛反対していました。半年くらいはろくに連絡もしませんでしたし、私自身、その状態にモヤモヤしていました。
インターンを終えて起業すると決めたときにやっと、自分のやりたいことを両親に伝えました。それまでは、ちゃんと向き合っていなかったんです。母には母なりの思いがあったのに、それを受け止めず、自分の思いを伝えることもしていなくて。それからは、両親は私のやりたいことを誰よりも応援してくれるようになりました。
私にとって、家族の「愛」が表されるのは食卓、食事です。家族においしいものを食べてほしい気持ちって無償の愛ですよね。その食卓をみんなで囲んで、笑いながら食べる。それを、どの国のどんな家庭にもつくりたい。
そんな思いたちを言葉にしたのが、タベモノガタリのビジョンです。
まずは農産物の流通から始めますが、それだけで終わるつもりはありません。八百屋事業を形にしたら、また違う事業を立ち上げていって、たくさんの人の「おいしい」を実現したいです。
―ありがとうございました!
ボーダレスグループでは、グループ各社の募集とあわせて、起業家の新卒採用も実施しています。
解決したい社会問題がある方や、社会を変えるビジネスを起こしたい方はぜひ、ご覧ください。