ボーダレスグループの「新卒採用 起業家コース」では、自ら事業を立ち上げることができます。実際に起業したメンバーは、学生のころにビジネス経験が豊富だったわけではありません。2018年卒・廣瀬智之もその1人。いわば"ビジネスのシロウト"が、どんな思いで・どうやって事業を立ち上げたのか、そのプロセスを聞きました。

「行動する人を増やしたい」から記者ではなく起業家に

―もともと、起業したい!と思っていたんですか?

いえ、全然思っていなかったです(笑)。

高校生のころから社会問題に興味はあって、大学生になってカンボジアに行きました。ボランティアをしたり、現地の人と一緒に染め物のブランドを作る中で、学ばせてもらったことがたくさんあったんです。でも、 開発途上国と言うとそれだけでマイナスなイメージを持たれがちなので、それを変えて、開発途上国に関わる人を増やしたいと思いました。

そこで、最初は東南アジアやアフリカの国々で取材をし、写真展やスタディツアーを実施するなど様々な手段で発信しました。その活動の中で痛感したのは、無関心な人に情報を届ける難しさ。

僕はもともと報道記者になりたかったのですが、この経験により「情報を発信するだけではなく、関心を持つ人や行動する人を増やす仕組みも必要だ。だったらそれを自分で作ろう」と思い、ビジネスでやると決めてボーダレスに辿り着いたんです。

とはいえ、ボーダレスってビジネス経験が全くなかった僕にとっては、ちょっと敷居が高い印象をもっていました(笑)

「学生のころから起業家を志望していた凄い人ばかりなんじゃないか?」とか、「シロウトの自分でも本当にできるのか?」と不安に思っていましたね。

 

教育事業→意見を持つ習慣をつけるアプリ事業へ

―卒業前の12月の内定者研修で事業プランを発表して、半年後の7月には会社設立が決まりました。どんな事業をやるんですか?

簡単に言うと、日本人の社会・政治への参加意識が低い問題を「自分の意見を持つ習慣を作る」ことで解決する事業です。

日本は社会や政治に参加する人が少ないと言われていて、北欧には投票率80%を超える国もありますが、日本はいま50%台です。

 

はじめは、日本人は政治や社会問題に無関心だから、関心を育むには教育だと思っていました。でも突き詰めて考えると、関心というのは内面的なことで、可視化がとても難しい。例えば、親に言われて嫌々選挙に行く人は関心があると言えるでしょうか?

日本人にどうなって欲しいかを考えて行き着いたのが、まずは「自分の意見を持っている」状態をつくることでした。行動している人は、何か意見があるから行動をする。だとすると、意見がないのに参加しろって結構酷だなと。

というのも、実際は関心がないわけではないと思うんです。ただ、自分の意見を持つほどにはよく分からない。つまり、無関心じゃなくて未認知だよねと。そこで、この問題を解決するセンターピンを「意見を持つ習慣を作る」ことに置きました。

その発想から「みんなの意見を知れるニュースアプリ」ができました。

このアプリでは、まず、1つのニュース記事に対して、運営側で1つ問いを立てます。例えば、韓国でプラスチック袋の有料化が義務になったニュースについて、「日本でもプラスチック袋の有料化を義務付けるべき?」というように。ユーザーは賛成・反対・その他の三択で投票して、理由をコメントします。

そうすることで、自分以外の人がどんな理由でどんな意見を持っているのかを、アプリ上で簡単に知れます。

他人の意見には色んな情報や、自分で考えるだけでは至らない視点がありますよね。
「この意見めっちゃ納得いくなあ!」と思えば自分の意見として取り入れればいいし、「全然納得いかへん!」と思えば、その問題について調べるきっかけにもなる。そうすると、自分のぼやーっとした意見が、どんどん明確なものになっていくんです。それを習慣化したかったので、ニュースアプリとして設計しました。

 

仮説検証を繰り返して、ようやく、事業化へ

―教育事業からニュースアプリに変えるのは大きな選択だったと思いますが、その選択はスムーズにできましたか?

スムーズにはいかなかったですね。特に、ソーシャルコンセプト(どのような問題をどう解決するか)を固めるのにすごく時間がかかりました。理想像はあるのに「どんな人をどんな状態にしたいの?」と聞かれると、スッと伝わる言葉にならない。結局、それは8割くらいの精度で一旦とめ、ビジネスモデル作りを進めることにしました。それくらい、本当に時間のかかる部分でした。

ビジネスモデル作りは、ひたすら仮説検証です。1つアイデアを出してはボス(田口)をはじめとするバックアップオフィスの意見を聞く。反応がよければ、実際にサービスの対象者となる人たちへヒアリングをして検証しました。

印象に残っているのが、教育事業のプランを作っていたときですね。公立中学高校に社会問題を学ぶ訪問授業をするプランで、その地域のお店が寄付授業を贈りながら広告をうてる「寄付型広告」を考えました。検証をするツテがなかったので、飛び込み営業ならぬ「飛び込みヒアリング」をしたんですね。毎日福岡市のお店や病院をまわると、いきなりの訪問なので怒られたり、白い目で見られたりすることもしばしばで…。「ああ事業を立ち上げるってこういうことなんだな」と、立ち上げる泥臭さを感じました。

結局これは検証段階で中止にしましたが、最終的なアイデアに行くまでに10回はこの工程を繰り返しています。それが終わってようやくいけそうな段階になれば、収益化のアイデアを出して収支計画に落とし込みます。

卒業して福岡に移ってから4ヶ月はずっとこんな状態で、7月にグループ社長会で承認をもらうことができて、事業スタートになりました。
※ボーダレスグループの起業の仕組み

シロウトでも形にできた背景に、バックアップオフィスの存在

―グループの中で起業してみて、どうでしたか?

アプリを開発する段階になってからは特に、バックアップオフィスに支えられました。アプリのデザインや細かい動きを作り込む過程にも、パートナー企業とのやりとりも、マーケティングディレクターの作内さんサラさんや、デザイナーの矢野さんに相当の時間を割いてもらって。

僕はロジカルに考えるのは苦ではないものの、ビジネスが分からない状態で事業を立ち上げたので、マーケティングやクリエイティブに関して完全に素人です。そんな状態でも思い一本でどうにか形になったのは、事業を自分ごとに考えて力を貸してくれるメンバーがいるから。自力だけで起業しようと思ったら、相当難しかったと思います。

また、アプリの要件が決まって発注をしたあと本格的に始動するまで3ヶ月ほどあったので、同じグループのPOST&POST(こども服・ベビー用品のリユース事業)で働きました。

業態は全然違いますが、社長の吉田さんが事業を動かす姿をじかに見て、その思想に触れる機会があって良かったです。経営者になる上で足りないであろうことを学ぶためにと、色んな仕事を任せてもらいました。メインは、オープン後に赤字が続いていた店舗のプロモーションです。何が原因なのかを突き詰め、売り場の改善から集客までひと通りやってみることができました。

―ボーダレスグループで起業する、この環境はどんな人に合うと思いますか?

起業にいたる背景には、いろんな思いがあると思います。自分の力でいいものを世の中に出していきたいとか、とにかくこの発明をたくさんの人に使ってほしいとか。もしかしたら、評価されたい目立ちたい、という人もいるかもしれません。

ボーダレスには、「社会問題を解決することが何より大切」という人が集まっていると感じています。立ち上げたらボーダレス・ジャパンの100%子会社になるので、そこについて知人に問われたこともありますが、あまり気にしたことはないですね。ボーダレスは"共有ポケット"をつくるために、全グループ会社が100%出資で繋がっているのであって、親会社・子会社というような支配関係ではないからです。

僕は、「目的縁」で繋がった人たちでたくさんの問題を解決していける方がいい。綺麗ごとかもしれませんが、みんなでみんなの夢を叶えたいと思ってここにいます。

冒頭で、ボーダレスは敷居が高いと思ったって言いましたけど、入ってみるとそんなことはなかったです。新卒で起業をするということを止められたことはありませんし、困ったときには会社の垣根を越えて、助け合う文化がボーダレスにはあるので、ビジネスの経験がなかった自分でもここまでこれたんだと思います。

僕は最終的には、政治参加や社会貢献活動などが日常に根付いた社会を作りたいです。まずはこのアプリ事業を軌道に乗せていく必要がありますが、その先で、もっと違う仕掛けをつくることもやってみたいですね。

―ありがとうございました!

ボーダレスグループでは、グループ各社の募集とあわせて、起業家の新卒採用も実施しています。

解決したい社会問題がある方や、社会を変えるビジネスを起こしたい方はぜひ、ご覧ください。