
前回からJOGGOでは、人事アドバイザー(精神保健福祉士)の石井さんから見たJOGGOの工場やメンバーの様子について、連載ブログ「精神保健福祉士から見たJOGGO」という形で発信しております。
第1回:精神保健福祉士から見たJOGGO①-前向きになるための相談-」
連載第2回の今回は、精神保健福祉士の石井さんが「採用面接」に同席する際に大切にしていることについてお話をうかがいました。それでは石井さん、よろしくお願いします!
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JOGGOの人事アドバイザー(精神保健福祉士)の石井です。
突然ですが、採用面接官の意識していることについて考えたことはありますか?また、採用面接できちんと話すべきことについて理解していますか?
私が採用面接で意識しているのは、その人が、
① どれだけ自分をわかっているか
② どれだけ働くことをわかっているか
③ どれだけJOGGOをわかっているか
ということです。
今回は1つめの「どれだけ自分をわかっているか=自分の障害をどれだけわかっているか」について、詳しくお話します。
病識があるということ

(革在庫チェック中。在庫管理も職人メンバーが分業して担っています。)
「どれだけ自分をわかっているか=自分の障害をどれだけわかっているか」を語る上で必要なキーワードがあります。それが「病識」です。今回のブログでいう「病識」とは、「自分が病気であるという自覚(病感)だけでなく、自分の病気ないし障害について正しく認識でき、適切な対応がとれること」を指します。
JOGGOは、障害を持っていても健常者と同じように働きたいという強い意志を持った人を正社員になることを前提に採用し、革職人として育てています。パートの求人もありますが、パートの期間で仕事を覚えたら、数か月後に正社員になる前提の募集です。
正社員が前提というと、「完璧で優秀な人のみを採用するのでは?」と構えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。JOGGOではそんなことはありません。私たちJOGGOは、はじめから完璧な人はいないと考えています。むしろ、人としても職人としてもどこかで壁にぶつかりながら成長していける人に魅力を感じ、ともに働く仲間として歓迎したいのです。実際に今の職人さんたちも、日々ちゃ~んと壁にぶつかっていますしね。
そして、ぶつかる壁の中には障害が原因・影響するものもあります。障害を原因・影響となる壁を乗り越えるときに非常に重要になるのが、「自分の障害への理解がある」=「病識がある」かどうかなのです。
知識があることが病識のあること?
採用面接で障害についての質問をすると、自分の病名の一般的な特徴を、専門用語を使って流ちょうに説明する人がいます。しかし、それは「その病気・障害の知識がある」というだけで、「病識がある」とは言えません。
私は、逆に病識がないから本やインターネットの言葉を使って説明しているのではないかと思ってしまいます。良い履歴書を目指すがゆえに、マニュアルか何かで見たような志望動機を書いてくる人を見ているような気分になるのです。
「病識のある人」とは、以下の2点を自分の言葉で説明できる人だと私は思っています。
・自分はこういう生きづらさ(=障害)がある
・生きづらさ(=障害)に対し、これまでどう向き合い対処してきたか
説明が苦手な方もいらっしゃるでしょう。でも、自分の言葉で説明することは、自分の生きづらさ(=障害)について自分の中で整理できている証でもあるのです。だから説明がたどたどしくても、きちんと今の自分を自分の言葉で説明できる人が「病識がある人」だと、私は捉えています。
職場でうまくいかないことが起きるのは想定内

(「菊寄せ」という、ひだをつける作業中。手作業でこれをやるなんて・・・)
応募者の中には「きちんと自分の症状を理解し、今まで対処してきてうまくやってきました」
という人がいます。しかし私は、そのような発言を受けてもあまり心が揺さぶられません。そういう人が就職後もうまくいくとは限らないことを、これまでの就業支援の経験を通して知っているからです。
「自分の障害を理解し、対処できた」ということは、逆に言えば、現在の障害理解の中で対応可能な経験しか積んでいないともとれます。それ自体は悪いことではないですし、もちろんその人の責任でもありません。ですが私は、この人は自分で対処できないことが起きた場合はどうするのだろうと心配になります。そして、その心配を晴らすための面接をするのですが、心配が晴らせるかどうかが採否に関わってくるのです。
仕事を始めればストレスは当然増えますし、職場では職場なりの出来事が起こります。特にJOGGOでは、健常者と同じように働いて活躍していくことを期待されていますから、健常者が経験する「当たり前の苦労」や「普通の悩み」もついてきます。
でも、これらの「うまくいかないこと」は私たちの中では想定内です。うまくいかないこと自体は問題ではありません。むしろ、「うまくいかないこと」を自分の障害に合わせたやり方で、乗り越え、対処していく力のほうが大切なのです。その新しい技を生み出すのに必要なのが、「自分の障害への理解」と「分析して力に変えるために向き合う勇気」。これらの力を持った人が「病識のある人」だと考えます。
(JOGGO人事アドバイザー/精神保健福祉士 石井)
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