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前回のバディブログ:つまり、情報共有って「愛」だと思う

今回のバディブログはバズマーケティングについて。

1.ファッションECサイトの代名詞

皆さんご存知のファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイが絶好調だ。2017年3月期の連結売上高は763億円となり上場以来10期連続で増収増益、営業利益率は34.4%と業界トップクラスの高水準を維持し続けている。さらに今年の8月には同社として初めて時価総額が1兆円を超え、代表を勤める前澤友作社長はいまやIT業界だけでなく日本を代表する経営者として風雲児的な存在となっている。

2004年に事業をスタートし、わずか13年で年間630万人以上が買い物をするファッションECサイトの代名詞的存在となった。事業立ち上げをした人であれば、一つの事業だけでこの数字がどれほど驚異的かはすぐに分かるだろう。

ZOZOTOWNの魅力とは一体何なのだろうか?

今回は経営者の前澤氏の経営術や、ゾゾタウン自体が持つサービスについてではなく、彼らが毎回のように仕掛けるユーザー巻き込み型のバズマーケティング(意図的に口コミを起こす)術について書いていきたい。

2.「ツケ払い」導入の種明かし

zozotownツケ払い

2016年11月。ZOZOTOWNは注文日から2か月後に支払いができる「ツケ払い」を開始した。発表と共に大々的にCMを流し、現在ブレイク中の女優、吉岡里帆さんが土砂降りの雨に打たれながら「好きなんだもん。2ヶ月待つなんて出来ないよ」と叫んだ。何より「ツケ払い」という言葉自体が話題となり「え、金を払わんでも買えるってこと!?」、「未成年が買いまくると思うけど大丈夫?」「ツケ払いCMの吉岡里帆が可愛すぎる」などと、賛否両論はあるにせよSNS上ではECの新しい支払い方法として話題となり瞬く間にバズられ拡散していった。

私自身もツケ払いなんて面白いことするなぁ、本当に購入者からの支払い滞納リスクはどうするんだろう、などと考えを巡らせていた。

ここで種明かしをする。

実は「ツケ払い」はGMOペイメントサービスが提供する「GMO後払い」サービスを利用している。ネットプロテクションズなどで有名なNP後払いと同じ仕組みだ。つまり何の事は無い、既にECサイトでは当たり前のように採用されている他社の後払いサービスを少しだけカスタマイズし(支払い期限を14日から60日に延長)名称を「ツケ払い」に変えただけなのだ。しかも、おそらく支払い金の回収リスクはGMOペイメントが負っている。

サービス導入から9か月後の2017年8月にZOZOTOWNはツケ払いの利用者数が100万人を突破したと発表。クレジットカードの利用に抵抗があったり、保有していない10代や20代のユーザーの取り込みに成功した。

もう一度言うが、他社のサービスを名前を変えてプロモーションしただけなのだ。

しかし、これが彼らのバズマーケティング術の秀逸なところである。「ツケ払い」というネーミングで他社のサービスをあたかも自社の斬新なオリジナルサービスに見せかけ、面白いCMを打つ。しかも途中からは追加のキャンペーンとして324円の手数料を無料にしている。

名前を変えただけじゃんという話ではない。ユーザーに話題となるネーミングは何か、ユーザーがシェアしやすい言葉は何か。言葉の力とアイデアを綿密に考える事によって、意図的にバズが巻き起こりやすいよう計算をして発信をしているのだ。

3.購入者による「送料自由」の仕掛け

zozotown送料自由

10月1日、ZOZOTOWNは購入時の送料を自由に設定できるようにすると発表した。送料といえば2016年末から2017年にかけてEC通販の流通量の激増により、クロネコヤマトや佐川の宅配便の運転手が残業を重ねても仕事が終わらず、昼食を取れないほどの悲惨な労働環境が話題となった時期だ。

「送料自由」開始の直前、前澤友作社長は自身のTwitterで「ZOZOTOWNの送料が変わります。通販・EC業界初の前代未聞の試みになるかと思います」と発信し、導入当日には「自由に価格を決めていただくことで、運ぶ人と受け取る人との間に、気持ちの交換が生まれれば素敵だなと思います」と呟いた。

このような動きも合わさり「送料無料」はまたもやSNSを中心にバズられまくり、テレビや新聞でも取り上げられ大反響となっていった。

「誰も送料無料しか選ばない気がするけど」
「今の配送業界を考えたら、ゾゾの動きはまっとうな気がする」

様々な意見が飛び交う。それもそのはず。前澤氏が言うように送料自由なんて前代未聞のアイデアなのだ。その言葉の新鮮さだけで十分にバズの要素を盛り込んでいる。全員が送料無料にしてしまったらいくらの損失になるのか、送料を高くしたらその分を配送会社に還元するのか、そんなことは社内で徹底的に試算しているだろう。でもおそらく「送料自由って面白くない?」ぐらいの一言で前澤氏は「よし、やろう」と即断しているはずだ。

こんな事できそうで、なかなかできない。冗談半分で社内でユニークなアイデアが出たとしても「何だよそれ」と笑い話で終わる。これがほとんどだ。知らず知らずにアイデアを埋没させてしまう。

でも、そこに耳を傾けるのは「送料自由」という言葉の面白さからバズ発生の可能性を感じ、そこから起きる口コミのPR効果に相当な威力がある事を知っているからだ。自分たちのアイデアで世間がザワつかせることは、彼らの大きなマーケティング戦略の一つとなっている。

ちなみに、送料自由は一か月足らずで終了。その後の送料は一律200円に変更された。5年前の2012年に前澤社長は、「ZOZOTOWNの送料が高い」というツイートに対して、「ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ」と呟き大炎上。その後謝罪し、送料は一時期、完全無料となっていた。さすがにこれはバズを狙ったものではないと思うが、この炎上の一件も今回のアイデアで覆すようなカタチとなったのではないだろうか。

4.身体の15,000箇所を瞬時に採寸する「ZOZOSUIT」

zozotwonZOZOSUIT

話題はさらに続く。先日11月22日、業界からも革新的と称された「ZOZOSUIT」が発表された。ZOZOSUITは究極のフィット感を実現するをテーマとし、体全体を瞬時に採寸できるセンサー内蔵のボディースーツで、着るだけで採寸が完了。接続したスマホを通じてゾゾタウンにデータが送信される仕様だ。前々から噂されたPB(プライベートブランド)についても、同時に「ZOZO」というブランドネームであることが発表され、アパレルブランドを戦々恐々とさせている。ZOZOSUIT自体かなり凄いのだが、最も素晴らしいと感じたのは、

服が人に合わせる時代へ

というキャッチコピーだ。ファッションECサイトは実際に試着ができないためモデルが着用した写真や動画で服を選ぶしかない。だから到着した服のサイズが自分に合ってないなんて事がしばしば起きる。それはインターネットで洋服を買うことの限界でもあった。その点、ZOZOSUITは自分の15,000箇所の身体のデータを予め送信しているため、送られてくる洋服が自分にフィットする確率は非常に高くなるはずだ。それを、ユニークに表現した「服が人に合わせる時代へ」というコピーが、またもや人々に何か新しそう!何か面白そう!という気持ちに掻き立てお得意のバズを発生させたのだ。

ただ、今回に至ってはこれまでのように言葉の面白さをとった戦略ではないのも確かだ。
ユーザーの体のサイズを全て把握した状態で洋服を販売するというのは、これまでのECサイトの概念をひっくり返し、サイズに間違いが起きるというファッションECの原理原則を変えてしまう行為といっても過言ではない。とてつもなく凄いことだ。

5.ZOZOTOWNが発信する違和感を帯びるキーワードたち

これまでZOZOのバズマーケティングに関する3つの事例をあげてきた。

・ツケ払い
・送料自由
・服が人に合わせる時代へ

単なる言葉遊びのように思えるものでも、その裏には課題を乗り越えるために入念に練られた戦略がある。「クレカ決済ができないユーザーを取り込みたい」、「ユーザーが望む適正送料を知りたい」、「絶対にサイズ間違いを起こさせない」そのような課題があったのかもしれない。

その課題解決をするために彼らが表出しするキーワードにはいつも「!」や「?」が付いてくる。聞いた瞬間に何か引っ掛かる感覚、何か新しさを感じる感覚。つまり、キーワード自体が何らかの違和感を帯びているのだ。その感覚が、ユーザーやオピニオンリーダー達に何らかの発言をさせてしまうチカラを引き起こす。その発言の数々から多くのメディアも誘発され、さらに加速したバズは嵐のように波及していく。

一つの課題を解決する時、いかにユーザーに違和感を与え話題にしてもらえるか。その言葉や見せ方のアウトプットを考えに考え、アイデアが詰まったキーワードを会社全体で発信する。だから毎回のように彼らの取り組みは話題となるのだ。

人々がSNS通じて勝手に自社の取り組みを宣伝してくれる。これほど投資対効果が高いプロモーションはない。これらを意図的につくり出すことこそが、ZOZOTOWNのバズマーケティング術だ。

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