
Photo by Kevin Krejci
前回のバディブログ:修正、また修正。ビジネスコンセプトを変えていけ!
いつも社長の相棒「バディ」の立場で書かせてもらっているが、今日は一人のマーケターとして。
1.夜に聞いた堀江貴文氏の持論
つい先日の夜。
そろそろ寝ようと家のソファを立とうとすると、
「飲食店に料理の美味しさは必要ない!」
という叫び声がテレビから聞こえてきた。目を向けると、あの堀江貴文氏。
テレビ東京の「俺の持論」という番組らしく、賛否両論が巻き起こるような話題をオピニオンリーダーがプレゼンする企画のようだ。堀江さんは以前、「寿司を握るために20年の修行は必要ない」とSNSで呟き物議を醸したのが記憶に新しい。
これだけを聞くと日々腕を磨く料理人や、それを志す者を否定するように聞こえるかもしれないが、そうではない。これは「経験の無い人が飲食店経営を成功させる」ための持論なのだ。
私は特に堀江さんの意見に傾倒していたり、普段から彼の意見に賛成したりする訳でもない。(というか、そんなに見てない)だけれど、この意見には腹落ちした。
ここで簡単に堀江氏の持論をざっくり解説する。
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日本で安くて美味い店なんて数え切れないほど存在する。そんな中で、同じ安くて美味いをコンセプトで戦っても当然競争に巻き込まれていく。特に日本は食品衛生責任者がいれば調理師免許も必要なく飲食店がオープンできるなど、飲食店開店の規制が緩く今後も競争の激化は収まらない。
また、レシピだってYouTubeとクックパッドで簡単にシェアが出来る時代で、少し器用な人であればすぐに同じような味が実現できてしまう。
「客は料理を食べてるのではなく、情報を食べている。」これからは、客とのコミュニケーションが上手く創れる飲食店が勝ち残る。その意味でスナックは最強。ママと話すことを求めて来店し、客に「店に貢献したい」という責任感さえ芽生えさせる。究極のコミュニケーションとも言えるスナックはいま外食産業トップの数を誇っている。
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でも、、美味しくないお店には行きたくないんですけど。と思うかもしれない。
私だってそうだ。もちろん、お店の料理が美味いに越したことはないし、よく食べログなどのレビューを見て店選びもする。安くて美味い!と思った店は個人的にお気に入りリストなんかも作っていたりする。だがその中で、実際に数回通った店はというと。本当にごく僅かだ。
2.店と客とのコミュニケーションをつくる
また行きたいという店の基準は「味が美味しかった」または「安かった」という理由だけか?いや違う。この2つは大事な要素ではあるが、その他にも「マスターの話が良かったな」、「店内の雰囲気が良かったな」、「盛り付けがインスタ映えだったな」、「面白いサービスだったな」などなど。また行きたくなるお店の要素はさまざまある。
以前、毎月のように通っていたお店がある。前の職場時代から行きはじめて4、5年は事あるごとに足が向いていた。会社から近くて行きやすかったのもあるが、安いわけでも、すごく美味しいわけでもない。正直どちらも普通だ。でも、レトロなソファや照明の雰囲気が好きだったし、なによりスタッフのコミュニケーションが素晴らしくいつも親近感を感じさせてくれた。お客さん!ではなく、自分の名前を呼んで接客してくれる特別感がとても嬉しかった。
つまり、堀江氏の言う通り客は情報を食べている。そして情報を伝える手段がコミュニケーションだと思う。コミュニケーションは客が入店してからは当然だが、もはやネットやSNSの検索からすでに始まっている。SNSの写真や文書が魅力的か、WEBサイトが行って見たいと思わせる内容になっているか、レビューはどうか。これらはお店側が最初にできる大切なコミュニケーションだ。その後入店してから帰るまでにどれだけ期待に応えたかで、口コミの発生率やシェア率が変わってくるのだ。
料理の味はそこそこで良い。金額も平均並みであれば良い。
重要なのはそれ以外に客とどれだけ良いコミュニケーションをつくれるかだ。スナックにはあまり行ったことがないのでよく分からないのだが、お店と客が対極した関係ではなく、一緒に店を営むパートナーのような関係になっていくのだろう。聞いた話では、ママはお客さんのプライベートや趣味嗜好を全て把握しているし、客もママの喜怒哀楽を聞いて飲んでいるうちに、勝手に「この店には自分が必要だ」と思い込むようになるという。最強だ。
3.ボーダレス初の飲食店「のいえ食堂」
今年の11月6日、横浜市にボーダレスでは初の飲食店「のいえ食堂」をオープンした。
これまでの理論でいくと、この食堂は間違いなく成功する。のいえ食堂は「安くて美味しい」を追求する食堂ではない。そんなこと言うとおぃおぃと怒られそうだが、この食堂が目指すコンセプトは「子育て応援コミュニティ食堂」だ。
いまの働く親世代は仕事に追われて家事をする時間はほとんどない、家事ができないどころか子どもと過ごす時間もろくに取れていない。そんな働く親の負担軽減と子ども達の居場所をつくるため、のいえ食堂では食堂以外に子どもが遊んだり、宿題をしたりするスペースを提供し、夕飯を食べたあとも親の帰りを待つサービスを計画している。
元々、子どもは個に属するものではなく地域に属すべき存在だ。かつての日本は、ずっとそうやって子育てをしてきたのに、いつのまにか子供は親だけで育てるものという理想像が出来上がってしまった。それを、もう一度子育てを地域へと戻していく。店は子育て中の親達や地域のコミュニティに溶け込むことで認められ、お客さんを巻き込めば巻き込むほどその存在感を増していく。やがて、店側はお客さんの趣味嗜好やプライベートをよく知るようになり、お客さんは子どもを毎日のように預かってくれるのいえ食堂を単なる飲食店ではなく、地域の大切なコミュニティスポットと感じるようになるだろう。そう、スナックと同じように価格や味よりもコミュニケーションが先行されていくのだ。
4.差別化を見極めるマーケター
のいえ食堂のサービスは飲食店を超えている部分があるが、会話を無くす例だってある。「一蘭」は客同士または店員との会話を断絶し、店のうんちくを読み込ませながらラーメンを提供する。それも一つのコミュニケーションとして認知され、あれだけ繁盛する。
これが「飲食店に料理の美味しさは必要ない!」論の裏にあるメッセージだ。味だけの差別化要素では、群雄割拠の飲食店経営は勝ち抜いていけない。
差別化の答えはマーケティングからは出てこない。飲食店を始める前に顧客にヒアリングしたって誰もが、安くて美味い店を作ってくれと言うだろう。こちらがやって見せて、初めて良いか悪いかを教えてくれる。今回、堀江氏の言葉に納得したのは経営の差別化を人の意見からではなく、マーケティング的持論で導いたからだと思う。
差別化を見極める目を持つことは、勝てるビジネスを創ること。
飲食店が客とのコミュニケーションを創ることが価値であるように、今後どの事業に対峙しても差別化のポイントを見極めるマーケターでありたい。
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