
突然ですが、あなたの性別は何ですか?
迷わずに答えるひとの答えは、きっと「女」か「男」だと思います。
それでは、上の質問には一体何通りの答えがあるのでしょう?
答えを私は知りません。
50かもしれないし、100かもしれません。
もしかしたら人間の数だけあってもいいのかもしれません。
そう、「女」と「男」以外にもたくさんの回答があるのです。
「ゲイ」
「レズビアン」
「バイセクシュアル」
「インターセクシュアル」
「トランスジェンダー」
「無性別」
「男ときどき女」
「女ときどき男」・・・etc.
性について考えるとき、生物学的にオスかメスであるかだけでなく、自分自身の性を何だと思うか(性自認)、社会的にどんな性役割を持って生きていくのか(社会的性)、どんな性の人を好きになるのか(性的指向)などのいくつかの要素について本来は考えなければなりません。
それくらいに「性」というのは本来多様なのです。
しかし、冒頭の質問に「女」か「男」で即答できた人にとって、日常の中で性別について意識する機会はあまりないのかもしれません。
実はかくいう私も、「自分の性は女です。」と即答できてしまうマジョリティ側の人間です。
今日はそんな"ノンケ自称スーパーアライ女ジャクソン"が、先日行われたレインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に足を運んで感じたことを書こうと思います!
※ノンケ…異性愛者、ヘテロセクシュアルの意
※アライ…「同盟、支援」を意味するallyが語源で、LGBT当事者でない人が、LGBTに代表される性的マイノリティを理解し支援する立場を明確にしている人々を指す言葉。
レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭
先日、東京で行われたレインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に行ってきました。
今年はなんと第25回という節目の年で、全17作品が10日間にわたり上映されました。
来場者は過去最多の約15,300名となり、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。(映画チケットは当日完売が相次ぐほどの盛況ぶりだったそう。)
映画以外にも、写真家レスリー・キーさんによるプロジェクト『OUT IN JAPAN』の1000人写真展企画や、LGBT当事者であるタレントの方々のトークショーなど、たくさんの企画が開催されました。
映画:「サマータイム」
出典:第25回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~ウェブサイト
17作品のうち、私が観たのは「サマータイム」というフランス映画でした。
英題:Summertime/原題:La Belle Saison
監督:カトリーヌ・コルシニ
2015|フランス、ベルギー|105分|フランス語
(2015年ロカルノ国際映画祭ヴァラエティ・ピアッツァ・グランデ賞受賞)
※以下ネタバレになるので、鑑賞予定のある方は飛ばしてください。
時は1971年。農家の一人娘デルフィーヌは保守的な両親から自立するため、パリへやってきます。そこでデルフィーヌは女性解放運動を率いるキャロルに出会い、二人は恋に落ちます。二人は周囲の反対にあいながらもお互いを激しく愛し合うのですが・・・。
というのがおおまかなあらすじです。
映画では当事者だけでなく、その周りの人々の感情までも克明に描かれていました。
異性愛者が同性に惹かれていく過程とその葛藤、自分の彼女が同性に恋に落ち自分の元から去って行ってしまう時の男の戸惑い、一人娘が同性愛者だとわかったときの母親の拒絶、幼い頃から想いを寄せてきた相手が同性愛者だとわかった時の男のやるせなさ・・・
私にはどの立場の人の気持ちも痛いほどによくわかりました。
けれども「こういう人であってほしい」と他人に願うのは所詮は自分のエゴでしかありません。
愛する人は誰にも決めることはできないのです。ときには本人でさえも。
どんなに時間がかかったとしても、その人のありのままを理解することでしかその先の関係を築くことはできません。
忘れてはならないのは、最も苦しいのは当事者本人だということ。
理解してほしい相手に理解してもらえない当事者の苦しみは、場所や時代を越えて共通するものだと思います。
映画も大変素晴らしかったのですが、最も印象的だったのは、上映後の館内の光景でした。
映画館全体が拍手喝采に包まれ、ふと後ろを振り返ると、多くの人が涙を拭いていたのでした。
当事者である人も、そうでない人も、同じ空間で同じものを観て心が共鳴したのだ、と思うと鳥肌が立ちました。
日本の、いや世界の人口を考えれば、規模は小さいかもしれません。
それでも、こういった共感の積み重ねが、差別のない世界をつくっていくのだろうと私は信じています。
ごちゃまぜの世界
今回の映画祭、私を含め、来場者の3分の1が異性愛者だったそうです。
「レインボー・リール東京」代表の宮沢英樹氏によると、
「海外の映画祭では、来場者のほとんどが当事者。性的少数者をテーマにした映画祭は世界中にあるが、来場者の3分の1が異性愛者というのはとても珍しいこと」だそうです。
当事者でない人がどれだけ理解を示すことができるか、ということが、性的マイノリティ(LGBT)の人々が生きやすい世の中をつくっていくためにこれからもっと重要になってくるでしょう。
南アフリカの黒人解放運動に尽力したネルソン・マンデラ氏は「自分がどれほどその習慣に誇りを持っていようと、自分自身の習慣に照らして他者を断罪する権利は一切ない」という言葉を残しましたが、これは現代を生きる我々も噛みしめるべき言葉だと思います。
相手を非難するのではなく受け入れる。
いろんな人がいて、ごちゃまぜの世界。
そんな世界が早く訪れますように。