
Mbuya ohoyere!! (クリア語でこんにちは!!)
前回に引き続きYutoがお送りします。
今回の第三回目では、リーダーとはどのような存在で、どのような能力や姿勢を持っているのが理想的なのか、自分が実際にケニア人から学んだことをもとにお話しできればと思います。
早速ですが、アルファジリのビジネスの中で超重要な役割を果たしているのがフィールドオフィサーです。彼らは地域ごとに配属された、いわば農家たちをまとめて、牽引するリーダー的存在です。
彼らはアルファチャマ(アルファジリ契約農家によって構成された少人数グループ)の運営を通じて、農家さんと直接やり取りをし、種・肥料のローン提供、ローンの回収、農業指導、作物の集荷の管理といったことを行います。契約農家と密接にかかわりながら、経営陣とたくさんの農家さんをつなぐフィールドオフィサーは、アルファジリのビジネスのキーファクターなのです。
しかし、ある地域のフィールドオフィサーは他の地域のフィールドオフィサーと比較した時に、レベルが低く、期日までにタスクをこなせなかったりと責任感がないことが分かりました。
また、こうしたフィールドオフィサーのもとで動いている農家さんの収穫量が少なく、それに伴って、ローン返済が困難になる農家さんが出てきてしまうということも分かったのです。
上記の現状を知った時に、自分は、「農家さんの収入アップ、そして貧困からの脱出という目標を達成するには、責任持って地域を引っ張ることができる、リーダーシップのあるフィールドオフィサーが各地域にいることが必要不可欠だ」と思いました。
そこで自分は理想のリーダー像というものを全フィールドオフィサーに共有することで、上記のようなフィールドオフィサーのリーダーシップの欠如による地域の収穫量低下を改善でき、より理想的かつ有益な関係性をアルファジリと小規模農家さんとの間に作ることができるのではないかと考えました。
しかし、そう意気込んだはいいものの、正直、自分はリーダーシップという言葉は知っていても、具体的に何がリーダーシップを構成するのか分からず、ぼんやりとしたイメージしか持っていませんでした。そこで、リリアンというベストフィールドオフィサー(優秀でリーダーシップのあるフィールドオフィサー)のもとを訪れ、リーダーシップとは何なのか、具体的なイメージをつかむために一日密着を決行しました。
ベストフィールドオフィサーのリリアン
これからリリアンから感じ、学んだリーダーシップを構成する9つの要素についてお話していきたいと思います。
1. 組織運営能力
リリアンが運営しているチャマは、しっかりと組織立てられており、議長、副議長、書記、副書記、金庫番、セキュリティーと役割が分けられています。それぞれが各々の役割を果たすことで組織がうまく回っているように見えました。
さらに、特定の個人に依存しない強いグループを作るために頻繁に役割を交換しているのもリリアンが決めたルールの一つです。また、リリアンは罰金システムを設けており、メンバーは遅刻・欠席をしたり、ミーティング中に携帯を鳴したり、カンパニーTシャツを着てこなかったりすると罰金を払わなければいけません。これによって、一人一人がルールを守り、チームで動くという意識を強くできると感じました。
それだけでなく、リリアンの運営するミーティングでは、毎回全員にしゃべる機会が与えられ、全員参加で議論が行われます。これも非常に大事なポイントであり、ただそこに座っているだけの参加ではなく、アクティブに参加している様子がうかがえました。
このように、リリアンは組織を強くそして一つにするために、いくつかのルール、決まりを設けていることが分かりました。個人に依存せず、まとまった組織を作り、それを円滑に動かしていく能力はリーダーシップの1つであると強く感じました。
チャマミーティングの様子
2. 目標設定能力
リリアンは目標を設定することをとても大切にしており、地域としての目標(大)、チャマごとの目標(中)、個人ごとの目標(小)と目標を細分化していることが分かりました。目標を地域としての大きなものだけでなく個人レベルまで詳細に設定することで、各農家が地域目標達成にどれだけ貢献できるのかという実感を持つことができ、また、個人目標によって、各農家の責任感を助長することができると考えられます。
目標設定をすることで、チームをリードし、共通の方向を向かせ、そこに向かって、個人はどれだけやるべきなのか、個人の役割を明確にすることもリーダーがやるべきことの一つと言えるのではないかと思いました。
3. 計画性とタイムマネジメント
リリアンにフィールドオフィサーにとって一番大切なことは何かと質問した際に返ってきた答えの一つが、計画性とタイムマネジメントでした。目標達成に向けて、いつ、どこで、誰が、何を、どのように行うのか、というプランを立てることが重要だと彼女は教えてくれました。
また、リリアンは毎週、週間計画を書いており、忙しい中でも、これを使いうまくタイムマネジメント、そして時間の有効活用をしているということが分かりました。
このように、目標達成へのプロセス、やるべきことを明確化し、時間をうまく使い、計画的にゴールに向かって進んでいくということも理想的なリーダーに求められる能力の一つであると思いました。
4. 観察力
リリアンは目標達成のために、特に綿密な観察をすることに力を入れています。彼女は毎日農家の畑に直接行き、畑を直接見て、直接農家の方と話すことで、目標達成の妨げになりうる真の問題や障害が見えてくると考えており、現地・現物・現実の三現主義の観点を大切にしているように思いました。
常にどこかに問題が眠っている考え、実際に現場に行き、綿密に観察し、問題を問題として捉える能力もリーダーに必要な能力であると感じました。
5. 迅速な対応
リリアンは問題を発見したり、報告された際、迅速に対応することを心掛けており、必要であれば、畑に直接行き、自ら指導、デモンストレーションを行うこともあると言っていました。問題が拡大し、さらに大きな問題に発展する前に、小さいうちにしっかりと手を打つこと、問題に対してスピーディーに対応し、的確な指導をすることができるということもリーダーが持つべき能力だと感じました。
6. コミュニケーション能力
頻繁に農家の方とコミュニケーションを取り、良い関係を築き上げることもリリアンがフィールドオフィサーとして大事にしていることの一つです。
できるだけたくさんの会話を通じて農家さんの理解を得るリリアンですが、頼んだことを約束した期日までにやってくれない農家さんがいる場合にはさらに多く彼らとコミュニケーションを取ると言っていました。
リリアンいわく、約束を守れない農家さんには、本当にやる気のない農家、やる気はあるがただやることが遅い農家の2パターンあり、彼女はその農家がどっちのパターンに属するのかを見極めるために2-4週間を使い、密にコミュニケーションを取ります。この時の会話で重視することは、まずは農家の方の話を聞き、彼らの理解に努め、そして、彼らを理解したうえで、その人に合った話し方で話すことであり、お互いが理解しあうまで会話を続けることが大切だとリリアンは言います。
2-4週間の密な対話をしても約束を守れない農家の方とは今後、契約を結ばないようですが、これはリリアンにとって最後の最後のオプションであり、できるだけ会話を通して理解しあえるように努力すると言っていました。
彼女はあれやれ、これやれと指示するのではなく、相手の考えや立場を尊重することを大切にし、そして、相手の理解なしに、相手は自分を理解してくれるわけがないという考えを持っているように感じました。コミュニケーション能力の中でも聞く力、相手のことを理解しようとする姿勢は、非常に重要であり、チームを引っ張っていく存在であるリーダーには必要不可欠な能力と言えます。
7. 責任感と覚悟
今回リリアンに直接会い、強く感じたことの一つが、彼女がやっている仕事への責任感と覚悟です。彼女は毎朝4時に起き、母として、農家として、フィールドオフィサーとして夜6-7時まで働くと言います。彼女はとても忙しく、子供の世話、家事、チャマのミーティング、新規農家さんへの説明会と、実際に今回の訪問の際にも、休んでいる姿は見られないくらい、常に動き回っていました。
しかし彼女は、忙しいからといって、妥協したり、他人のせいにしたり、言い訳をすることは決してないそうです。自分の仕事に責任を持ち、それをやり抜く覚悟をリリアンから感じ、これらもリーダーシップを構成する要素の一つであると思いました。
8. 自己犠牲
また、リリアンと行動を1日ではあるが共にしてみて、忙しい中でもできるだけ多くの時間を農家さんに割くということも大切であると感じました。リリアンは母としても農家としてやることはたくさんあるが、できるだけ多くの時間を農家の方に捧げることを大切にしています。
周りのために献身的に動き、自分の利益よりも他者・仲間そしてチームとしての利益を優先するという考え方ができるかどうか、自分についてきてくれている人たちに親身になって自分の時間を割けるかどうか、これもリーダーに必要な資質だと感じました。
9. 愛と情熱
愛と情熱はリリアンが思うフィールドオフィサーに最も必要なことの一つです。彼女は、以前ナイロビで働いていた経験がありますが、地元から離れていたため、あまり満足した生活を送ることができなかったと教えてくれました。しかし、今は地元で活動できることに大きな喜びを感じており、彼女は地元、地元住民が好きで、好きだからこそ、情熱を持って、彼らのために全力で仕事ができているように感じました。
仕事や仲間に愛情と情熱を持ち、その姿を見るだけで仲間がついていきたいと思えるようなリーダーでいることもチームを引っ張る存在である、リーダーに必要な資質と言えると思いました。
みなさんもきっと、仕事に対して愛も情熱も感じられないリーダーにはついていきたくないと思います。自分は絶対に嫌です!
これら9つがリリアンから学んだ理想のリーダーを構成する要素です。
ここまで、長々と書きましたが、一つの図にまとめるとこんな感じです。
今回の訪問で強く感じたことは、フィールドオフィサーは上から指示を出すボスではなく、農家さんと同じ目線で、先頭に立って彼らを励ましながら、ゴールに向かって地域を引っ張っていける存在でいなければいけないということです。リリアンはそれができているからこそ、ベストフィールドオフィサーと呼ばれ、同僚や農家さんから信頼を得られているように思いました。
実際にリリアンのもとを訪れ、1日密着したことで、抽象的でいまいち掴めていなかったリーダーシップというものを具体的なものにすることができました。
これは既存のフィールドオフィサーや、事業拡大に伴い増えるであろう新規フィールドオフィサーへの学びになるだけでなく、自分自身が近い将来、社会に出た時にも重要になってくる考え方だと思います。
アルファジリでのインターンシップを通じて、ケニアという未知な地で、ケニア人女性リーダーから今後に活きてくる、貴重な学びを得ることができました!
ケニアに行ってからは毎日が学び、発見、気づきの連続で、インターンシップ終了から1ケ月経った今でも、本当にインターンシップ参加を決意してよかったなと、感じています!
ということで、今回はケニア人女性が教えてくれたリーダーに必要な9つの要素を紹介したところで、おしまいです。
次回は、最終回として、アルファジリでの約2ケ月間のインターンシップを通じて何を学び、何を得たのかをお話ししたいと思います。
次回もお楽しみに!!
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□Vol.12: インターン生のわたしが成し遂げた3つのこと(From Tika 3/4)
□Vol.13: 就活は恋愛と同じ。100人からモテるよりも、1人から深く愛された方がいい(From Tika 4/4)
□Vol.14: 普通の大学生がインターンに応募した3つの理由(From Yuto 1/4)
□Vol.15: 共同生活から見えたケニアの小規模農家のリアル(From Yuto 2/4)
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