こんにちは!昨年6月から12月の半年間、グアテマラにて、ILOITOO(イロイト)の工房でインターン生として活動していました佐野友紀です。インターンを通じて得たもの、学んだことを綴りたいと思います。

私がインターン生として関わらせていただいた業務は、「イロイトの生産工程全て」と言っても過言ではありません。

スカートとなる民族衣装の生地の買い付けから、生産ラインの確立、生産オペレーションの改善、品質管理、在庫管理、スーパーバイザーとして工房のマネジメント、工房外の刺繍やビーズの生産者とのやり取り、縫製コンサルとの連絡、毎月の発注や新商品について日本の販売部門とのやり取り、日々の収支計算や給与計算、そしてパッキングと発送、という具合に多岐にわたる業務に携わらせていただきました。

今回はその中でも、特に苦労したことや努力したことその結果このインターンを通して得たものをご紹介します。


(工房のあるSan Juan la Lagunaの民族衣装を着せてもらいました。)

まず、日本人とグアテマラ人の感覚や考え方の違いが挙げられます。
特に「仕事に対する姿勢」。

良し悪しは別として、日本人は比較的仕事の優先順位が高く、よほどのことがない限り休むことはないように感じます。一方、グアテマラの人は、自分や家族の用事を優先する傾向にあります。

親戚の集まり、緊急ではない病院、教会の行事のため欠勤・遅刻・早退など、最初は休みを認めていましたが、次第に毎日のように誰かが休んでいたり、緊急ではないのに当日の朝になって急に休みを取りたいと言う工員が出てきたり、生産にも大きく影響が出るようになってしまいました。

裁断する人が急遽休むことになり、次の行程である、アイロンをする人の仕事がなくなったり、細かい調整を何度もしなければいけなくなり生産効率が悪くなる一方。このままでは生産ペースを維持できなくなる、きちんと自分の仕事に責任も持って働いてもらわなければいけないと思い、工房での方針を決めることを上司である郁香さん(MAYSOL社長 呉原郁香)に提案しました。

ただ工房で働く女性の半数以上は小さな子どものいるお母さんであり、マヤの女性です。女性が働きやすい環境作りをしたいという反面、どこまで厳しくルールを決めるべきなのか何日も悩みました。ルールを厳しくしすぎるとグアテマラ人に日本人の感覚を押し付けてしまっているのではないか?など私自身の中にも様々な葛藤がありました。

その結果、基本的には欠勤・遅刻・欠席は認めない、という方針に決まりました。

ILOITOOも含むソーシャルビジネスは、援助ではなくあくまで「ビジネス」であり、工員の私情で生産に影響が出てしまっては元も子もない。今後、より大きくなった工房を経営していくには、きちんとルールを定めることが必要だ、という考えに至りました。


(工房メンバーの子どもの誕生日会にて)

また、時間に対する感覚も、日本とグアテマラでは大きく異なります。通常、グアテマラでは、30分や1時間の遅刻は当たり前、バスの時刻表もあってないようなものです。そんな中、イロイトの工房では5分前出勤を徹底しています。

私がこのインターンを通して常に考えていたことの1つに、「日本人だからできることはなんだろう?」「現地工房にわざわざ日本人インターンが入る意味は?」というものがあります。

活動していく中で、それは、時間を守ること、真面目に働くこと、整理整頓することなど工員の手本となることではないかと思うようになりました。そして、時間を必ず守る、誰よりも早く工房へ行く、誰よりも働く、など工員にお手本となるように行動で見せるように心掛けました

また、グアテマラの人にはない視点から改善点を挙げられるのも日本人としての自分の強みではないかと考え、備品管理表やメンテナンス表の作成など、工房をより良くするために努めました。その結果、時間厳守や整理整頓等、私が働き始めた当初よりは確実に良くなってきたと思います。私の姿を見て、工房の皆が少しでも意識を変えてくれていたら、嬉しいです。


(イロイトの工房では、午後の集中力を高めるために毎日ラジオ体操をしています。)

もう1つ苦労したことに、スーパーバイザーとしての自分の地位や態度があります。
イロイトの工房があるSan Juan la Lagunaの人々は、とてもフレンドリーで、工房のメンバーも例外ではありません。休日に近くの湖へ行こうと誘ってくれたり、子どもの誕生日会に招待してくれたり、ととても親しくしてくれ、工員との思い出を挙げ始めるときりがありません...。

しかし、仕事は仕事。勤務中は、私は皆を監督する立場です。
元々人の上に立つ立場はあまり経験したことがなく、強く注意することへの苦手意識もあり、また、ほとんどの工員が自分より年上だったため、皆になめられないように、仕事中は友達にならないように、と仕事とオフの時の切り替えに苦労しました。

郁香さんに対してと私に対してでは工員の態度が違う...郁香さんの言うことはすぐに聞くのに私が言っても中々伝わらない...どうしたら良いんだろう。。。

そんな時は、郁香さんに相談し、顔つきや声のトーンなど、仕事ムードとプライベートムードでは180度切り替える。自分は真剣に話しているということを表情や態度で伝えることが大切だと教わりました。少しずつですが、これも重要なマネジメント力の1つなんだ、工員とのコミュニケーションを取る際に、気をつけて工員との関係性もかなり改善することができました。


(同僚の結婚式にて。工房メンバー全員で参加しました。)

インターン期間中、前半の3ヶ月は工房の生産マネジメント、後半は工房外の生産者や日本とのやり取りを主に担当させていただきました。その中から私が最も苦労した工房外の生産者とのやり取りを紹介します。

イロイトのスカートの中には花や鳥などの刺繍が施されているもの、スカート以外にもビーズの商品を販売しています。これらはSan Juan la Lagunaにある工房で生産しているのではなく、刺繍やビーズの民芸品で有名なSantiago Atitlánという村の女性にお願いしています。

刺繍とビーズに関しては、10名ほどの女性グループを作り、こちらの注文に沿って各自が自宅で生産し、グループのリーダーに提出、リーダーが月2回ほどイロイトの工房に納品に来る、という形をとっていました。その中で私は、商品の発注から生産者との連絡、納品、支払いと全ての工程に携わらせていただいたのですが、この「グループの管理」に奮闘しました。

まず、工房ではなく各自が家に持ち帰って作業するため、品質維持が難しい。さらに、検品は2週間に1度の納品時のみなので、2週間分全てやり直しをお願いしたこともあるほど...。

この村の女性はスペイン語があまり得意ではない人も多く、また、個々人とではなくリーダーとのみやり取りするので、指示が全員にきちんと行き渡っていないことも...。リーダーの負担が大きくなってしまったり、グループ内でいざこざがあったり、とトラブル続き。グループを管理する難しさとともに、自分のマネジメント力のなさ(工房内だったらなんとか回せるようになったのに...)を痛感しました。

そんな中でも、工房メンバーの手を借りながら生産者とこまめに連絡を取ったり、発注書を改良したり、グループを管理するための用紙を作ったり、日本からの発注に合わせて生産できるように生産管理のエクセルを作ったり、と奮闘しました。

正直なところ、最後まで刺繍とビーズに関しては完璧な生産システムを構築することはできませんでしたが、大変だった分、良いものが出来上がった時の達成感はより大きかったように感じます。私自身、元々グアテマラの刺繍が大好きな分、こんなに素敵なものが日本に届くんだ!ととても嬉しかったです。この生産システムはまだ工房で奮闘するインターン生のなつきに託したいと思います。


(Santiago Atitlánの生産者による刺繍)

ここまで長々と書いてしまいましたが、最後にこのインターンで得たことを振り返りたいと思います。

私がこのインターンで得たものは、ズバリ「責任感」だと思います!

最初に述べたように、このインターンでは「イロイトの生産工程全て」に関わらせたいただきました。多くの仕事を任せてもらえるということは、それだけ責任も大きくなります。基本的に工房には、工員と現地人スーパーバイザー、そして私を含むインターン生だけだったので、「イロイトの生産部門には自分たちインターンが責任を持つんだ!」というような気概を持って働いていました。責任が大きいということは、やり遂げた時の達成感も大きく、イロイトのインターンでは本当に貴重な経験をさせていただきました。

また、困難にぶつかった時に柔軟に対応する力もついたのではないかと思います。
インターン初日より、上司である郁香さんより一インターン生としてではなく、一社員という自覚を持って働くように指導を受けていました。当初よりグアテマラでの仕事のやり方は、困ったことや問題があると状況をきちんと理解し、その上で改善案を自ら出す。一番良い改善案を上司である郁香さんに理由を含めて提案し、解決策を一緒に決定します。

今まで「面倒くさいこと・難しいことからはとりあえず逃げる」性格だったのが、このインターンを通して、「難しい問題に直面しても自分の頭で考えて柔軟に対応し、責任感を持ってやり遂げる」自分になれたのではないかと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

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