
今、パリに留学している高校の時からの友達がいる。「七生」と書いて「ななお」と読む女の子だ。
七生とは高校の時の部活が一緒で、その時から今も連絡を取り続けている。
時々であっても、ずっと連絡を取り続けている友達ってすごく少なくて、さらに七生とは高校の時に「一緒に雑誌を作ろう」と約束したことも相まって、本当になんだか大切な存在なのだ。
七生は昔から「フランスとインドが好き!フランスかインドのポンディシェリに留学したい。」と言っていた。私はす、すごい組み合わせだ!と思いながらも、いつも真っ直ぐな彼女を素敵だなと思っていた。
そして七生は本当に自分の力でその夢を実現させて、今年の9月にパリに旅立っていったのだった。ちなみにポンディシェリ(puducherry)とは、インドの東海岸に位置する旧フランス植民地である。

「いっしー!今日パリにあるスウェーデン文化センター的なとこのギャラリーに行って面白い展示してたの!捨てられるTシャツとかセーターを使って、スウェーデンのデザイン工房が作ったラグを展示してたの。これ機械とか大きなスペースを使わない技法で作ってるから、家内工業とかで生地を生産してる国でも応用できるらしく、インドとかバンクラデシュでも活動してるみたい。そういう背景がなくとも、素敵なラグだったよ。デザインって大事やね。」
このプロジェクトは、2012年にスウェーデンのデザイン会社 「Studio Brieditis & Evans」のKATARINA BRIEDITISとKATARINA EVANSの女性二人が「社会的かつ環境に優しい持続可能なラグ」を求めて試験的に始めたデザインプロジェクトで、現在はスウェーデン芸術委員会の助成を受けて活動を行っているそうだ。
「We DESIGN and make experimental handmade rugs, of materials considered worthless.」
「価値がないと思われている素材をデザインし、実験的なラグを手作りました」
「All material is good material if only you find the right use for it.」
「全ての素材は良い素材です。あなたが正しい使い方を見つけさえすれば」
Re Rag Rugでは、様々な織物技法を使った12種類のデザインラグが販売されている。繊維産業の廃棄物や古着を、ラグの原料として再生利用している。
かぎ針編みやふさ飾り、刺繍、アップリケなどなど…様々な技術を組み合わせてこの12種類の美しいラグを織り上げていて、それぞれのラグにそれぞれのストーリーがある。
そのなかの一つには、日本の伝統的な絣織を使った「Kasuri」もあったりして驚いた。この「Kasuri」ラグはTシャツ産業で過剰に生まれる廃棄物を原料に、インドで作られているらしい。
捨てられるはずだったものをリサイクルやリユースする方法もあるが、新しい物に再生させる「リプロデュース」という道もとても実用的で素敵だなと思った。
Re Rag Rugのラグはデザインがとにかく素敵で、七生も言っているが『プロジェクトの背景を知らせなくとも消費者を動かす力』を持っていると感じた。それって本当に大切で、すごい事だと思う。
七生がいなかったらこのプロジェクトを知ることもなかったかと思うと、教えてくれた事が嬉しくて、七生に感謝を伝えるとともに現在のパリの様子も尋ねた。
「一応もう日常って感じかな。大きな駅は銃もった警備員さんがたくさんいるし、手荷物検査多いけど、慣れてきた。慣れたらダメなんやけどね。ただ飲食店とかお客さん少ないみたいよ!」
と返ってきた。
もうパリで同時多発テロが起きてから23日も経っていることに驚く。慣れたらダメなことに慣れていく。
意識をしないとあっという間に日常に戻ってしまう自分を情けなく思う。
そんな時に「またパリでなんか面白いのあったら送るね!!」と新しい情報をくれる友達がいることを心強く感じる。
そして、そういえば高校時代はいっしーとかおにぎりって呼ばれてたなあ、と懐かしく思うのだった。