僕らがやっている事業は、“エシカル”を前面に出したマーケティングをやらないため、一見するとふつうのビジネスと何が違うのか分かりません。もっとそこをPRするとこの会社の知名度も上がるんでしょうが(笑)、僕らはあまりやらない。

なぜ?とよく聞かれるので、今日はビジネスレザーファクトリーを例にその理由について少しお話します。

ビジネスレザーファクトリーはアジア最貧国であるバングラデシュの貧困層に雇用を生み出すことを目的に始まった、ビジネスアイテム専門の本革ブランドです。

日本の職人から学んだ高い技術で、「高品質」「低価格」を実現し、2014年にインターネット販売を開始、2015年6月には福岡・天神に直営1号店をオープンしました。

今後も大阪・東京など5号店まで出店が決まっている他、全国の商業施設や空港から出店要請をいただくブランドに急成長しています。

ビジネスレザーファクトリー福岡天神店

最初はたった2人から始まったバングラデシュ自社工場の従業員はこの2年間で300名を超え、今後も早い段階で500名・1000名と採用できるようにチーム一丸となって頑張っています。

バングラデシュ工場のなかまたち

ただし、
このブランドは「バングラデシュの貧困層を救うエシカルプロダクト」という売り方をしていません。

その理由は2つあります。

まず一つ目は、マーケットサイズです。「エシカル」を前面に押し出すことで、確かにメディアにも取り上げられやすくなるし、ある特定のファンを獲得しやすくはなるでしょう。ただし、それでも「エシカルなものを買う」というエシカルマーケットはまだ小さいという現実から目をそらしてはいけません。“一人でも多くの貧しい人に仕事を創る”というのが事業の目的であれば。

そしてもう1つの理由は、僕がバングラデシュで働く工場の人であれば、「かわいそうだから買ってくれた」というのは嫌だから。「君たちの国の貧困をどうにかしたいから、一緒にがんばろう」と言われるのと「一緒に日本の消費者に人気の商品を生み出していこう」と言われるのではどちらがやる気を生み出すでしょうか?僕らがやりたいことは、「援助」ではなく「共に自立の道を見つけて行くこと」なのです。

これは現地の工場に行けば分かります。彼らと話をし、彼らの一生懸命な姿を見ると、“この人のために”とかいう気持ちよりも、“こいつらと一緒に成長するんだ”という仲間意識が自然と生まれてきます。“かわいそうだから買ってください”とは言えないんですね。

バングラデシュの人口1.5億人の約9割がイスラム教徒で、年に1回行われるイスラム教のお祭り「イード」では国中のイスラム教徒が牛などの家畜をアッラーに捧げます。3分の1は日ごろ肉が食べられない貧しい人たちたに分け与えるという決まりもあります。

その際、大量の牛皮が発生するのです。しかしこの牛皮は多くの場合、革として輸出するにとどまっていました。これをバングラデシュ国内で製品化まですることにより、多くの雇用が生まれることに着目しました。

ところが、日本の革業界の人たちに聞くと、現在でもバングラデシュの革製品と言えば、「安かろう、悪かろう」というイメージのようです。そのイメージを払拭するためにも、なんとしても高品質の革製品に仕上げる必要がありました。

そこで、日本でもトップクラスの老舗メーカーに頼み込んで、バングラデシュ代表のファルクが親方直々に2ヶ月間技術指導をしてもらい、日本の技術・ジャパンクオリティを学びました。

バングラデシュ代表ファルク

バングラデシュの工場では、仕事がない人たちや障害がある人たち、シングルマザーたちなど生活が苦しい人を優先的に採用しているため、経験者あまりいません。

一から技術を教えながら、病気やケガの時はみんなで工場のみんなで医療費出し合ったり、300名を超える大きな家族のような素敵な工場は現地でも注目されているようです。

「買い物を通して社会を良くしたい」という消費者の想いを実現する選択肢としてフェアトレードやエシカルブランドの存在は重要だと思いますし、これからもっと増えていくべきだと思います。私たちもそのようなエシカルブランドを今後立ち上げていくことはあるでしょう。

しかし、今僕らが第一優先で取り組まないといけない課題を「一人でも多くの貧しい人たちに仕事を創ること」と定めたのであれば、そこから逃げてはいけません。そのためには、大きなマーケットに挑戦し、一気に事業を拡大できる戦略を描くことが必要です。

そして、一人でも多くの仕事を生み出し、家族の生活を立て直す、そして子どもたちに教育の機会と夢を与えてあげる、その実現にこだわってボーダレスメンバーたちは日々奮闘しています。

ビジネスレザーファクトリー福岡天神店店内写真

ビジネスレザーファクトリーの公式ページを是非見てください。バングラデシュの仲間たちと一緒に試行錯誤しながら、最高のモノづくりを目指して頑張っています!