
最近なにかと話題の武雄市図書館に行ってみた。
のどかな武雄市の風景の中に、一体どんなお洒落な外観の図書館が現れるのか…、と心の準備体操をしていた矢先、図書館の前でまず馬と対面して度肝を抜かれてしまった。
なんでも武雄市図書館の目と鼻の先にある武雄神社で、10月23日に流鏑馬(やぶさめ)行事が執り行われるらしい。
うーむ。出だしから興味をそそる武雄市図書館…。
図書館は、外観も内装も実に近代的。
ガラス張り、スタバあり、キッズスペースあり、天井高し、緑多し、テラス席あり。
暖かい照明の中にコーヒーの香りが漂う空間…。図書館というより、素敵カフェに来たという感覚にさせてくれる。
そもそもなぜ武雄市図書館に来たのかというと、昨今日本で空前のブームになっているリノベーションやDIYがなぜここまで流行り始めたのか、という事に興味があったからだ。
武雄市図書館は、民間企業(CCC)に管理・運営を委託した後の選書問題等で注目されているのは勿論のこと、公共施設のリノベーションという点でも大きく注目されている。
建物のリノベーションのみならず、公共施設である図書館の運営(開館時間の延長・365日開館・Tポイントカードの導入等)を、現代人のライフスタイルに合わせて革新しているのが目新しい。CCCへの委託前から比べると、来館者数は約3倍になっているそうだ。ということは現代人の心をつかむリノベーション、リノベーションは現代人の心をつかむ、ともいえる。
【リノベーション】
=既存の建物に対して大規模な改修工事を行い価値を高めること
【DIY】
=Do It Yourself=自分の手で何かを作ること
島リノベ・高架下リノベ・古民家リノベ・廃校リノベ・倉庫リノベ・ビルリノベ…
今日本中であふれているリノベーション。
私の住む街博多にも、10月の期間限定で博多RENOVATION CAFEという、リノベーションかつDIYで出来たカフェが登場している。街でもTVでも雑誌でも、リノベーションやDIYという言葉を見ない日はないほど、私たちの日常生活に浸透してきている。
そもそも日本は「スクラップアンドビルド」、つまり古くなったものは壊して新しいものを建てる!という文化でやってきたのに、今なぜリノベーションなのか、と辿ってみるとそんなに明るくない事情が見えてきた。
少子高齢化で人口の減少が進み、空き家が増加している日本。
経済状況の悪化で、世帯の年間所得が低下してきた日本。
このような大きな背景を持って、日本の住宅不動産市場そのものが、新しい住居をどんどん建てていた新築フローの時代から、住居ストックの時代に変わってきているのである。
高いお金を出して新築のどこかで見たことがあるような物件を買うのではなく、古くても安価かつ、自分のライフスタイルに合ったこだわりの空間を創ることができるからこそ、今リノベーションなのである。
リノベーションやDIYはとても良いことだと思う。なんといってもエコである。自分の手で作ったこだわりの空間や物を、人々は愛着を持って長く利用し続けるはずだ。
ただ、武雄市図書館の問題にみるように、中身をまるっと取り替えたところコンテンツが弱くなっていて新たな問題を作り出していたり、DIYで何かを作ったけれどすぐゴミになってしまっていたり…ではあまり意味がない。
ブームは移り変わりが激しい。リノベーションブームが去ったあとも愛し続けられるものを作ってこそ、始めて環境にもお財布にも優しい付加価値のあるリノベーションだったといえるのではないだろうか。10年後も使っていられる新しい物を今買うのか、1年でゴミになるリノベーションやDIYをするのか。
ブームの渦中だからこそ、私たちはよく考えなければならないと思う。