
人口の半分が難民
2011年から始まったシリア紛争は収束の気配を見せず、2014年末にはシリアを難民の最多発生国とした。国外へ逃れたシリア難民は約410万人。そして国内で避難生活を送っている人々は760万人にものぼる。これはシリアの総人口の約半数、世界の避難民の約5分の1という、他に類をみない規模となっている。
難民の行き先
シリア難民の主な避難先は、周辺国であるトルコ、レバノン、ヨルダンなどで、避難国の約9割を占める。しかし、難民の爆発的な増加により周辺国で難民キャンプに入るのは難しく、生活状態も悪化しているため、欧州を目指す難民が増えている。
さらに今月、世界食糧計画(WFP)は財源不足のため、シリア周辺国に滞在する難民36万人への食料支援を打ち切った。またイラクでは8月、世界保健機関(WHO)や提携する支援団体が医療支援の84%を中止している。
これらの難民支援機関の深刻な財源不足が、難民をさらに欧州へと向かわせる一因となっている。
難民がドイツを目指す理由
特にドイツを目指す難民が多い。ドイツは労働力不足から難民を受け入れたいという思惑もあり、国として難民の生活支援に60億ユーロ(約8,000億)を拠出する意向だ。内訳は難民の収容施設や給付金の支払い、ドイツ語教育など、避難後もある程度の保証が見込める。難民にとっては大きな魅力である。
避難先までの険しい道のり
しかし、ドイツへ行くとなれば直線距離でも3,000km以上ある。逃げるのにも相当なお金がかかる。すでに越境請負業というビジネスが出来上がっており、年間1500億円市場とも言われている。
シリア難民を標的とするシリア人悪徳請負業者も多い。トルコからギリシャへ向かうゴムボートに、1人4000ドル(約48万円)請求されるケースもあるという。それだけ法外な値段を払っても、定員の2倍以上の人員とともに故障したボートに乗せられ、死亡者を多く出すなど、安全性にもかなりの問題がある。
川上泰徳氏による「ドイツまで歩いたシリア難民の証言」を読むと、どれほど国境越えが過酷なものなのかが想像できる。お金がなければ難民になることもできない。
難民への対応には各国葛藤も
ドイツ
命をかけて欧州にたどり着いても、安心はできない。表面的には受け入れに好意的なドイツでも、極右勢力の難民排斥デモや受け入れ施設への放火・襲撃が相次いでいる。職を奪われることや難民を受け入れる負担を懸念する住民もいるということだ。
緊急措置として開放した国境も、押し寄せる難民の多さに1週間で国境管理をする方向へと政策転換した。
ハンガリー
欧州への玄関口であるハンガリーも、難民を食い止めようと徒歩入国唯一のルートであるセルビアとの国境に通じる線路をフェンスで封鎖した。政府は約175キロに及ぶセルビアとの国境をフェンスで遮る工事も進めている。
さらにフェンスに近づく難民に催涙ガスをふきかけたり、水を放ってどうにか難民の入国を防ごうとしている。また難民キャンプでも食べ物を地面に投げて配給するなど、人権を尊重しない対応が目立つ。
日本
しかし一番非人道的なのは、どの国より難民の受け入れに消極的な日本かもしれない。これまでに日本に難民申請したシリア人は60人で、そのうち認められたのはわずか3人。欧州やアメリカでも数万~数十万単位での受け入れをしている現状を考えると、どれだけ少ないかがわかる。
※参考:日本にもある難民問題。国内2万人の「難民」が安心して生活できる社会とは?
最後に
各国の対応に、難民に対して同情的な気持ちになりつつも、突然何万という異教徒が連日押し寄せてくる状況には、恐怖や負担の懸念が勝るとしても不思議はないのかもしれません。
ですが、ボーダレス・ジャパンは本気で難民の方々のための新規事業プランを考え、動き出そうとしています。
また、プランはすぐに実行に移せないとしても、寄付ならできると思いませんか。「日本人はお金しか出さない」という国際社会の非難もありますが、お金がないと最低限の食料支援もできません。今一番困っているのは、難民より国外に逃れることもできない国内避難民かもしれません。
世界食糧計画で寄付を募集しているようです。1,000円から募金できます。私も募金しました。
http://www.jawfp.org/lp/helpsyria/
自分にできることは小さなことですが、できることをしていきたいと思います。みなさんも、ぜひ自分にできることを見つけてみてください。きっとあると思います。