ボーダレス・ジャパンでは、2023年3月17日~21日の5日間、ソーシャルビジネスの現場を知るボーダレススタディツアー in Bangladeshを開催しました。

全国各地から参加した大学生がそれぞれの学びや想いを綴っています。ぜひご覧ください。

【参加者レポート No.4 鈴木あゆのさん】

京都在住の大学1年生。(ツアー参加当時)芸術大学で空間デザインやファッションデザイン、ソーシャルデザインなど幅広くデザイン分野を学びながら、「人」と「もの」に関わること、そして「人々の暮らしを豊かにすること」の三つを軸に自分には何ができるのか、何がしたいのかを模索している。

Q.スタディツアーに参加した理由を教えてください

 バングラデシュに行くことを決めたのは、一言で言えば「直感」でした。普段はどちらかというととても怖がりで、何をするにも自分の中で理由を持ち、念入りな準備をしてからものごとを決定するタイプなのですが、このツアーへの参加を決めたのは「私は今、ここに行かなければいけない」という本能的な思いを感じたことが最大の決め手だったように感じています。

もちろん、「直感」の中にも理由はあります。直感的に「行きたい」と感じた理由を探って行くと、ファストファッションの現状や世界の貧困、労働、人権、教育に関する問題に関心があったことや食や暮らし、宗教、伝統工芸などの異文化に強い関心があったことが挙げられます。

ですがこれらは後付けの理由なのかもしれない、と思うほどにバングラデシュという場所を訪れることに心が動いたのです。それはバングラデシュという場所にいけば、心を動かされる何かに出会えるのではないかと感じていたからです。
このツアーを知った当時の私は目指したい社会像も自分自身も曖昧になり、何から手をつければいいのかと、ただただ日々の生活をあがきながら過ごしていました。そんな時に舞い込んできたのが、ここではない場所に足を踏み入れられるこのツアーのお話で、心が動いたことを何よりも大切にこのツアーへの参加を決意しました。

Q.ツアーを通して得た学びや新たな気づきを教えてください

私がこのスタディーツアーを通して得たのは、一言では語れないほど多くの気づきや学び、そして生産者からみた社会の真実でした。

バングラデシュ滞在期間は5日間という短い時間ではありましたが、現地では朝から夜まで常に新しい情報を吸収し続け、さらには深夜まで学んだことや考えたこと、感じたこと、自分たち自身の話を参加メンバーと語り明かし、濃密という言葉にふさわしい時間を過ごすことができました。

そんな時間の中で私が考え続けることになったのは、本当の「幸せ」や「豊かさ」とは何なのかという疑問についてでした。バングラデシュは発展途上国と言われるように、生活水準の高さや教育の普及率、経済的貧困面では圧倒的に日本を下回っています。ですが、私が今回の旅で気がつかされたのは、本当の意味で貧困状態にあるのはむしろ、日本で暮らす私たちなのではないかということです。

先にも書いたように教育や医療、衛生面、栄養取得などといった面では日本はバングラデシュよりも遥かに豊かであり、自分の行動次第で生き方を変えられる可能性を与えられた人々が多いのは確かな事実です。
しかしながら、自由に生きられることや一日に三食のご飯が食べられること、教育を受けられること、未来を想像できることが私たちにとってあまりにも「当たり前」になってしまったが故に、私たちは本来身近な場所に溢れているはずの「幸せ」や「豊かさ」に気がつけなくなってしまっていたのではないか、ということに私はこの5日間を通して気がつかされました。

バングラデシュで生きる多くの人々にとって日本の「当たり前」は決して「当たり前」などではなく、ご飯を食べることや子どもに教育を受けさせること、未来を描くこと、彼らはそれらを「当たり前」にするために今日を生きているのだと強く感じました。しかし同時に、私たちよりも生や死の存在を近くに感じている彼らだからこそ、生きることや食べること、将来の夢を描くこと、誰かと繋がること、などといった人間の根源的な営みの中の「幸せ」や「豊かさ」に気がつけているのではないかと思いました。

一方で私たちが暮らす日本では、それらの価値を見落として日々に鬱々としたり、自分や社会の価値を見落としてしまう、「心の貧困」を抱えた人々が数多くいるのではないかと感じます。どちらが本当の意味で「幸せ」なのか、「豊か」なのかは今の私には分かりません。ですが、バングラデシュで過ごした5日間を通して感じたのは、少なくとも経済がもたらす豊かさだけが本当の豊かさではないということです。そしてそのような気づきを通して、改めて「幸せ」や「豊かさ」とは何なのかと向き合い、自分の中の答えを見つけるとともに、それらを他者に与えられる人になりたいと感じました。

Q.ツアーでの経験をどのように生かしていきたいですか?

 バングラデシュを訪れる前までの自分には明確と言えませんが、目指したい世界や関わっていきたい世界のようなものがありました。ですがバングラデシュ帰国後、自分は本当は何がしたいのか、何に関心があり、今後何をしていきたいのかが分からなくなりました。しかし、それは決して悪いことではなく、5日間という時間に全力を尽くして向き合い、学んできたからこそ見えた、ありのままの自分であると思っています。

私はバングラデシュでの経験を通して、過去の経験から無意識的に離れようとしていた教育の世界や、途上国と社会問題の世界、異文化に触れることなど、知らず知らずのうちに自分自身で関心を狭めていたことに気がつく事ができました。そして今は改めて、今後自分は何を大切にしながら生きていきたいのか、どのような人になりたいのか、どのように社会と関わっていきたいのかをもっと広く世界を知る中で見つけていきたいと思っています。

Q.このブログをご覧の方へメッセージ

 このスタディーツアーやバングラデシュに関心を抱いている方が入れば、誰がなんと言おうと自分の目で耳で、鼻で五感でバングラデシュを感じて欲しいです
どんなに情報が簡単に手に入る世の中になったとしても、自分の肌で感じる、それ以上に学べることはないのではないかと思います。学びたいという意思さえあれば、どんな状況であれ学びは得られるし、学びや気づきをつくるのは誰でもない自分自身なのだと思います。だからこそ、自分の心が少しでも動くのなら自分の目で見て欲しいです。

なんて、私は誰かに言えるほど行動ができている人間ではないので、これは自分自身への言葉です。「動くかどうか迷っているのなら、動け。心に正直に、自分の人生を自分で描け」、と。哲学者であり教育者でもあるジョン・デューイの著者に書かれた、「1オンスの経験は1トンの理論にまさる。」という言葉を胸に、まずは自分が自分自身に胸を張れるように生きていきたいと思います。

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