皆さん、こんにちは。
Relight株式会社の市川です。

私たちはホームレス問題をはじめとする、日本の貧困問題をテーマに事業を展開しています。
現在は家のない方向けの寮付きのお仕事紹介「いえとしごと」と、自分で家を借りづらい方向けのサブリース事業「コシツ」の2つの事業を通じて、生活を立て直すお手伝いをさせていただいています。
(事業を立ち上げた理由や想いの詳細はこちらの記事をご覧ください)

事業を始めて約2年4か月、少しずつですが紹介先の会社さんも増え、その分相談に来られた方に仕事を紹介でき、仕事と住まいの両方を確保することができました。
最近ではありがたいことに支援団体の方や、家族や友人からの紹介で「いえとしごと」を知り、問い合わせをしてくれる方もいます。
いえとしごとなら何とかしてくれるかもしれない…とお繋ぎいただいているのかと思うと素直に嬉しいですし、お役に立てるよう、より一層頑張らなければ、と思いながら日々仕事をしています。

多くの方に知っていただけるようになったきっかけとして、メディアで取り上げていただくようになったことが、理由の1つとして挙げられます。
普段どれだけ自分で発信しても届かない層に広くリーチできたマスメディアは、やっぱりすごい。

しかしながら、情報が独り歩きしていってしまうので、自分の事業を通じての実態をきちんと説明できず、たまに「世の中どこも人手不足なんだから、仕事なんていっぱいある。
働かない人は甘えているし、怠け者なんだ。」といったようなコメントをいただくことがあります。
ああ、このままでは世の中の偏見を助長してしまうと思い、今回は「働かない人は怠け者なのか?」と、別の角度でよくいただく質問「ホームレス問題を知って私たちにできることは何か?」も併せて私なりの回答を書きたいと思います。

「働かない人は怠け者なのか?」

メディアの効果もあり、いろいろな会社さんと話す機会をいただいています。
その際によく聞くのが「ニュースでよく見る生活に困っている人や、炊き出しなどに並ぶ人たちで働きたい人がいればなあと思うけど、実際に求人を出しても全然応募がない。」という内容。

結構好待遇の会社さんでも人が来ない。
そうするこんな感じに連想していきます。
「自分の仕事はそんな嫌な仕事なのか…いや、待遇も良いし、そんなことはない、結局のところ、困っている人は働きたくないんじゃないか?」と。

一方、相談に来る人たちと話していてよく感じるのは、情報が多すぎて必要な情報が本人たちに全然届いていないということ。
焦っていたり、困っていたりすると、視野が狭くなるためきちんと調べてどの求人が良いか判断することができなくなります。
また、もともと検索して情報を得ることが苦手な人もいます。
そうすると、携帯が使えなかったり、身分証がなかったりの自分の現状で応募できる求人がなくて焦る。
働きたいとは思っているので、なんかいい感じに見える怪しい求人や、法的に危ない求人でも早く働けるなら飛びついてしまいます。

今はどの会社も人手不足なので、求人が多すぎて埋もれます。
良い会社だとしても知ることができなければ、そして応募できると思ってもらえなければ選んでもらえません。
そして相談に来る人は応募できる求人がなくて困っているので、ここに乖離があります。そもそも応募できないのです。

また、他のパターンとして、ちゃんと長く続けられるかどうか考えた結果、応募できない人もいます。
しっかり続けられそうな仕事に就かないと、受け入れてくれた会社さんに申し訳ないし、立て直せなければ不安定な生活を繰り返してしまう…と、悩みすぎて動けなくなっています。
真面目過ぎるがゆえに、とりあえず繋ぎで働くというのは失礼だし…と考えて踏み出せなくなっています。
その場合は、その人にぴったりの仕事があればお繋ぎしますが、なければ福祉制度やNPO法人さんにお願いをして、当面の生活を落ち着かせてから仕事をゆっくり探すことを提案しています。
そもそも体調が悪い人や、腰や膝を痛めていて身体を動かす仕事ができない人もいるので、そちらをお勧めしています。

また、中には「絶対この仕事しかしたくないし、その仕事しかできない」という明確な希望を持つ人もいます。
過去の経験からそう判断していて、特にその仕事で長くキャリアを築いた人に多いです。
その場合も該当する仕事がない場合は福祉制度に繋げるようにしています。
やりたくない仕事をしないと生きていけない社会にしたくないからです。
仕事の紹介をしていますが、働かなくてもとりあえず生きていける社会のほうが良いと思っているので、そうしています。
また、自分の職場に嫌々働いている人がいるのも、そこで働くスタッフさん的に気持ちのいいものではないと思います。

「働かない人」と思われている方の状況は様々です。
携帯がないなどの理由で仕事に応募できない場合や、体調が悪いなどの理由で「働けない人」は理解されやすいですが、特定の仕事しかできない・したくないという人は、単に仕事を選んでいるように見えてしまって、怠けていてわがままだと思われてしまいます。
でも、よく話してみると、その人なりの理由や背景があって。
その事情を知らないで怠け者かどうかなんて、そもそも他人が判断するもんじゃないなと思います。

こんなに求人があるのにうまく繋がれないのは何故だ…と事業をしながらいつも思っているので、上記の推論に時間を使うよりも、働きたくても働けない人に自分でも働けるかも!と思ってもらえるような仕事の情報を届けることに、一緒に時間を使っていけたらと思います。
そして、人のことを表層的に判断しない、懐の深い社会になれば、多少希望と異なる職種でも挑戦してみたいと一歩踏み出せる人も増えるのかもしれません。

「ホームレス問題を知って私たちにできることは何か?」

生活にお困りの人に仕事を提供すること以外に、何か関われることはないですか?とよく質問をいただきます。
ニュースで報道されている生活に困っている人の状況に胸を痛め、何かしたいけど周りにいないし何をしたらいいかわからない…ともやもやしている人は多いのではないでしょうか?

雇用の提供以外にわかりやすい関わり方だと、炊き出しなどの支援現場のボランティアや、寄付などが挙げられます。
それ以外にも、政策としてもっとサポートを増やすように訴えかけることもできると思います。

しかしながら、ボランティア活動や寄付に対して馴染みがない人の場合は、少々ハードルが高いかもしれません。
その場合によくお勧めしているのが、自分の職場の中で何か困っている人がいないか見渡すこと。そして声掛けをすること。

例えば、職場で辞める人がいた際、その人は次に仕事が決まっているのか、体調が悪くて辞める場合は他に頼る人がいるのかなど、自分の半径数メートルの範囲くらいには声掛けをしてみてください。
「いえとしごと」に相談に来た人の中でも、誰にも相談できず、適切なタイミングで適切な情報に繋がれなかった人が多く、困り果ててから相談してくれるケースがほとんどです。
また、家族や友人には近すぎて言えなかったとよく聞きます。

家族とは関係性が悪い場合や、仲がいい場合も、お金がないとは申し訳なくて言えないし、友人にお金がないと相談してしまうと、お金を欲しいと解釈され、友人関係を壊してしまいそうで言えないそうです。
でも「いえとしごと」のスタッフは良い意味で第三者なので気持ちを吐露しやすい。
そういう意味では職場などの近いけど第三者の存在が、主観や感情を入れずに話し合えて、もしかしたら言いやすいのかもしれないのではないかと思います。
(もちろんある程度信頼関係が築けていないと本音を話してくれないと思いますが)

家を失ったり、お金が尽きたりしてから立て直そうとすると、時間がかかりますし、その過程で精神的に追い詰められて心身ともに体調を崩す方もいます。
そうなる前に、周りの人たちが「ちょっとお節介」をして早期に立て直すことができればいいなと思います。

ホームレス状態は特別なことではなくて、私たちの生活と地続きの身近な状態です。だからこそ「ホームレス状態の人を支援するんだ!」と変に括らず、身の回りの生活で困っていそうな人に情報を届けてあげてほしいし、必要であれば相談先まで付き添ってあげてほしい。

SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」社会とは、もしかしたら「ちょっとお節介」があふれる、少しうざったいけど温かい社会のことなのかもしれません。
皆さんとそんな社会を一緒に作れたらいいなと思います。