2021年12月。私は事業を辞める決断をしました。
私、竹下友里絵がボーダレス・ジャパンに参画し、タベモノガタリという会社を立ち上げたのは2019年2月のことです。

規格外野菜(=流通の規格に当てはまらない、形が悪かったり傷がある野菜)のフードロス問題に取り組むために、兵庫県神戸市で農産物流通事業(八百屋)を始めました。

屋号は「八百屋のタケシタ(以下、竹下屋)」。私の苗字をとって名付けました。取り上げていただいたメディア数は30社近くにもなり、神戸にもたくさんのファンの方ができ、大切にしてきたブランドです。

そんなブランドを手放す決断をして1ヶ月半が経過しました。売り場は全て撤退し、今は次なる新規事業のプランニングをボーダレスの中で行っています。

今回は「ソーシャルビジネスを辞めること」について少し綴らせていただこうと思います。

3年間愛してきたブランドを、いとも簡単に辞めれてしまった。


辞めた経緯は次の見出しでお話しするとして、まずは辞めれてしまったという事実をどう捉えるかを考えたいと思います。

ソーシャルビジネスとは社会問題を解決するためのビジネスです。
その中にはビジネスの対象とする人(竹下屋の場合は農家)がいて、彼らが抱える課題をビジネス的なソリューションで解決します。

「辞める」という行為はどういうことかというと、そのソリューションがなくなるということです。
社会問題が解決に向かっているはずの状態をまた逆戻りさせるということです。

私が辞める決断をしたのは2021年12月。そこから店舗撤退を実際に行ったのは1ヶ月以内です。
生産者に報告に回り、辞める旨を伝えたところ、もちろん販路に困る声はいただくものの、「業者がいなくなるのはよくあることだから、大丈夫。なんとかなるから。」という声もたくさんいただきました。

みんな私を気遣ってそう言ってくれたのかもしれませんが、私が感じたことは「ああ、竹下屋はこの程度しかインパクトを残せていなかったんだな。」ということでした。あった方がそりゃいいけど、なくても良い事業にしかなっていなかった。そんな事実を辞める時にあらためて実感しました。

ボーダレス・ジャパンの仕組みの中で、起業家が事業を辞める際はボーダレス本体が事業を引き継ぐケースがあります。
今回は(ローカル事業ということもありますが)引き継ぐ必要さえない事業だったと思います。

なぜ辞める決断に至ったのか。


違和感を持ち始めたのは2021年8月頃でした。売上をどんどん伸ばしていくために店舗を増やそうと計画していた時のことです。
このまま流通量を上げ続けるのが本当に農家のためになっているのか、疑問を持ちはじめました。

そこから農家にヒアリングに回ったところ、私が想像してた以上に所得が低いこと(300万円台)、基本1人で作業しているので生産量に限界があるということを知りました。
いくら適正価格で仕入れて、今まで廃棄していた規格外野菜を販売できるようになったとて、彼らの収益が年間200万円上がるかというとその未来が想像できなかったのです。

今生産している野菜を適正価格で少しでも買うことは確かに役に立つことはできているけれど、収益を【最大化】できるかと問うた時にこの流通事業では無理だと結論付けました。

もっと早く気づけたのではないかという反省はあるものの、一方で竹下屋を始めた当時22歳の私にはその実力がなかったのも感じています。
ボーダレスの中で3年間挑戦させていただき、たくさん失敗もさせていただいたおかげで成長した今だからこそ気づけたこと、考えられることがたくさんあるのだと思います。

失敗を経て、次に挑戦することとは


現在次の事業のプランニングを始めて1ヶ月半が経過しています。毎日ヒアリングなど行いながら2月中の完成を目指しています。

竹下屋の事業プランニングの際の反省点として、「フードロス問題」という切り口から入ったため、「誰のための事業なのか」という点を明確にできていなかったことがあります。今回の事業はまず誰のための事業なのかから考えることにしました。

既存の繋がりの生産者の中で一緒になって取り組みたい・取り組むべきだと感じたのは「有機・無農薬栽培の個人・家族経営の農家」と特定しました。
農薬の是非は一旦置いておくとして、有機栽培を志す生産者の多くは「食べる人が安心できる、環境にもやさしい農業をしたい」という熱い想いを持つ人たちが多くいます。

しかしながら有機肥料は化成肥料(化学的に作られた肥料)よりも高かったり、除草剤を使わない影響から手間がかかります。利益を出すには有機ではない野菜に比べて少し高く販売する必要があります。しかしその販路開拓は難しく、価格競争に巻き込まれているのが現状です。

私は次の事業で、彼らの所得を年間200万円向上させることを目標にすることにしました。

細かい事業内容はまだ決まっていませんが、方向性としては収穫体験や農業体験など、野菜販売ではなく体験を販売することによって生産者に副収入を作れないかを考えています。季節が暖かくなる頃に、皆様に発表できるように引き続き頑張りたいと思います。

ソーシャルビジネスを1度は辞めたとしても根っこは社会起業家です。挑戦させていただけるボーダレスの環境に感謝しながら、「絶対やめないでくれ!」と言われるぐらい大きなインパクトを出せるソーシャルビジネスを立ち上げたいと思います。

おまけ...
竹下屋での挑戦とこれからのことをのほほんと話したyoutube LIVEがあるので、興味を持ってくださった方はぜひラジオ感覚で聞いてみてください。

タベモノガタリ株式会社
代表取締役 竹下友里絵