
アルファジリは創業から5年間、貧困小規模農家が安定的・継続的に収入を得られ文化的な生活を送れるよう、農業で収入を得られる仕組みづくりをしてきました。
多くの会員農家の農業月収は、起業当初の3,700円程度から、6,300円 にまで上昇しています。
一方、会員の目標月収は2万円であり、まだまだ目標金額には達していません。しかし、様々な事業モデルへの挑戦をとおして、アルファジリ流の貧困解決方法は成果をあげていっています。
1. 必要な資本がことごとく乏しい貧困農村
まず、収入を向上させるために必要な資本とは、以下のものが挙げられるのではないでしょうか。
(a) 資源(土地・恵まれた気候・労働力)
(b) 市場 (販路)
(c) 人的資本(農業知識・スキル・営業力)
(d) 金融資本(財力・金融アクセス)
(e) 設備(生産・加工・流通・ブランド化)
アルファジリの対象農村は、(a)を除き(b)-(e)すべてが非常に乏しい状態です。
2.『資本共有』によりみんなで生活を向上させる
販路やファイナンス、技術トレーニングなど、様々なサービスの提供が必要になわけですが、教育を受けていない会員が独りでサービスを使いこなすのは難しいことです。
しかし私たちは、サービスを会員グループに対して提供することで、会員が助け合いながら共同利用できるようにしています。『資本共有』こそが事業の根底をなす考え方です。
例えば、作物の買取、農業トレーニング、ローン提供などのサービスを、一人ひとりの会員に対して行なうことはあまりありません。作物の買取日はグループが一斉に集荷ポイントに持寄りますし、トレーニングもグループで受けます。農業資材のローンは、毎週グループで集めてからアルファジリに返済されます。
3. 資本共有のベースとなる『アルファチャマ』
このグループの助け合い、なぜそんなにうまくいくのでしょうか?
一つは、明らかにアルファジリと会員の強い信頼関係です。アルファジリのサービスは誠実だと、会員からの信頼を得ているからです。
二つ目は、伝統的なインフォーマル金融を行うグループ『チャマ』に対してサービス提供しているから。
この写真は、15人程度の会員からなるグループが、週次の集会を開いて、お金を出し合っているところです。
現金を持ち寄りグループで貯蓄したり、一緒に使ったり、借り入れが必要なメンバーに対して貸付しています。ケニアではこのグループを『チャマ』と呼び、世界中で、同じ仕組みが異なる名前で存在しています。
私たちは、会員農家が組成するチャマのことを『アルファチャマ』と呼んでいますが、チャマの仕組みこそ、資本共有が上手くいく理由です。
アルファチャマでの貯蓄と貸し借りがメンバーの責任感や団結力を強め、資本を賢くみんなで運用しようという相互扶助意識を醸成しているんです。
4. 生産量↑ x 単価↑ の両面からアプローチ
さて、アルファチャマを中心に、どうやって実際に収入を向上させているか、いくつかの例をあげます。
基本的に私たちは、『生産量アップ』『単価アップ』どちらの面からも取り組んでいます。
A. 大豆サプライチェーン
アルファジリは、2016年からアルファチャマと大豆栽培契約を結び、年間120トン以上の大豆を流通させています。この大豆は、大量卸・自社店舗での小売・また自社加工したものを自社店舗で販売することで、生産量も買取単価も上げていっています。
B. 農家直送の青果店 Alphajiri Greengrocer (首都・中所得者以上対象)
会員農家は、大豆以外にも、パッションフルーツ、かぼちゃ、アボカドなど様々な作物を生産しています。このような作物は、大抵自家消費用に生産しているのですが、換金作物としても余剰栽培すれば、アルファジリが買い取ることができます。そして自社店舗に直送し、未加工のまま販売したり、ランチやジュースなどに加工し販売することで、生産量も単価も上げていくことができます。どの作物も、初期投資やマンパワーを増やさず生産量を上げやすいことも、会員農家にとってのメリットです。
C. 穀物専門の小売店(首都・低所得者対象)
こちらは今月から開始予定の小売事業ですが、ケニアの人口の中でも低所得者層に最も需要の高い穀類を会員農家から買い取り、低所得者居住区で店舗販売するビジネスです。
穀類は必需作物ですので市場価値の上げにくい作物です。しかし一方、生産の労働負荷が少なく保存も効くため、余った土地を利用して生産拡大することが容易な作物です。もともと会員農家にとって、豆はトウモロコシ畑の隙間に植えるような存在ですので、豆単体の栽培面積を少し広げるだけでも、生産量を容易に2倍以上に上げることが可能です。
D. 養鶏・養蜂へのファイナンス
鶏肉やはちみつの市場価格も、割と天井があるのですが、こちらも労働力を増やさずに生産量を上げられる生産物です。ただし養鶏や養蜂は、園芸作物に比べ初期投資がよりかかるので、貧しい農家には元手がありません。アルファジリがアルファチャマに初期投資し、アルファチャマ単位で生産活動を行います。5月から、1つのアルファチャマで、養鶏のファイナンスの試験運用が始まっています。
5. 会員農家の収入は増え続ける
現在平均6,300円程度に上昇した会員農家の農業月収。上記のビジネスが伸長していくことで、農業からの月収は最低でも一人当たり1万4千円程度に上昇する試算です。さらに、会員ひとりひとりの収入が向上することで、アルファチャマの貯蓄額・グループ内貸付の金額も増えていくため、病気や学費、葬儀など、緊急でまとまったお金が必要な時に、借り入れできる金額が増加していきます。
6. 収入を伸ばし続けることがゴールではない
今回はわかりやすくするため、収入向上の推移を裏付けに、貧困をどう解決しているか書きました。しかし実際にアルファジリが描く未来は抽象的で、その未来は農村の人々がつくりあげていくものですので、収入の数値をアルファジリがいつまでも追う必要はないと考えています。
ただ、格差社会、つまり資本を持てない貧困者が取り残され、人間としての優劣までもつけられてしまう社会は、資本主義の歪みから生まれたネガティブな面であるからこそ、必ず改善しなくてはなりません。
不必要な格差を生まない社会を目指すには、どうしたら良いだろうか。
貧しい農村社会が、小さなコミュニティ単位(アルファチャマ)で資本を共有しながら、共に成長することはできないだろうか?
格差社会ではなく、共創する社会として成長できるのではないか。
さらには、他人より多く得るために競争するのではなく、資本を共有する社会では、環境汚染・地球温暖化の根源となる過剰生産・過剰消費の道を断つことができるのではないか?
自然と調和した経済システムを作ることができるのではないだろうか?
そういった仮説から、アルファジリは様々な試行錯誤を行なっているに過ぎません。
良い未来をずっと創り続けられる社会とはどんなものだろうか。
次の世代がより輝けるような社会とはどんなものだろうか。
大人の私たちが、こういった問いに向き合い、考え、行動し続けることそのものが、より良い未来をつくっていくと信じて、アルファジリは農村の人びととともに歩んでいます。
アルファジリ
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