
こんにちは。Enter the E代表の植月です。
現在私は「人や環境に配慮した洋服だけを扱うセレクトショップ」をオンライン中心に行っています。
このセレクトショップの事業をはじめるときに4つのことを掲げて始めました。
1. 人や環境に配慮した洋服の選択肢を増やすことでこれ以上状況を悪くさせない消費
2.「大切に長く使う」「必要な分だけ買う」くらし
3.「売って使って捨てる構造」や「使い捨て社会」から 「輪廻転生」の社会
4.「服で環境をよくする」恩返し
今日はこの4つのお話をしたいと思います。
1. 人や環境に配慮した洋服の選択肢を増やすことでこれ以上状況を悪くさせない消費
アパレル産業は生産から破棄までの工程で、残念なことに気候変動や土壌・水質汚染を起こす原因を作っており、全業界の中で2番目に環境負荷が高い産業とも言われています。例えば、洋服の生産時に必要なコットンを早く安く大量に作るために使われる農薬の量は、世界の農薬使用量の4分の1を占めているというデータがあります。そしてその農薬の中毒によって、約7万人の生産者が苦しんでいます。また洋服のリサイクル率は11% 他の製品に比べてとても低いことも問題です。日本国内だけでも年間100万トン、数にして33億着が捨てられており、新品も5,6割が破棄されているという事実があります。
私たちが安くてサイクルの早い洋服を求めた結果、正当な賃金が払われず買いたたかれたり卑劣な環境で働かされる労働問題もあります。
「人や環境に配慮した洋服を身に付けたい」という意向を持っている人は半数にも上るという調査結果があります。しかしながら身につけて「実践している人」はわずか20%で、8割の方が意向があるのに実践できていません。
この結果は5年前と変わらない割合で、日本ではまだまだエシカルファッションのつくり手やオーガニック素材の保護が足りておらず、デザインや価格の選択肢も少ないために、なかなか一般化には至っていないことを表しています。
そこで私は、日本ではまず “エシカルファッションの選択肢を増やすこと” が一番必要だと考え、このセレクトショップの立ち上げに至りました。
例えばレギュラーコットンの洋服からオーガニック製品、合成繊維のものから生分解性のある製品や、リサイクルしやすい素材を選択することで、生産時にかかるCo2を減らしお水を減らすことにもつながります。
1年しか持たないデザインや品質の洋服をいるよりもデザインも品質も長持ちする洋服を選ぶほうが洋服を破棄する量を減らすことができます。
どこでどのように作られたのか辿れない服を着るよりも、顔の見える洋服を選ぶことで、長く大切に使う気持ちを育みます。
もちろん一番は必要以上に買わないことが大切ですが、もし買うとしたら是非選んでいただきたいです。
エシカルファッションがなぜ必要なのか、関わる人がどのような想いで作り大切にしているのか透明さを大切に、配慮する社会をあたりまえにしてこれ以上洋服を作る、使う、破棄することで状況が悪くならないように、日々邁進しています。
2.「1着を大切に長く使う」「必要な分だけ買う」くらし
この10年でファッションは大きく変化してしまいました。恥ずかしいことに日本人は4回袖を通しただけで捨てているという調査結果もあります。またこの5年で破棄された洋服の量は22億着から30億着となりました。ファストファッションの台頭で、トレンドのファッションを短いサイクルで楽しみたい気持ちの高まりが引き起こしたのかもしれません。
衝動で沢山買いすぎ、長持ちしない洋服を選んだ結果、破棄する量も増やしてしましました。世界でも15年前に比べて洋服を着る期間は半分も短くなっています。
Enter the E ではお洋服の無駄買いを防ぐためのカウンセリングも行っています。その場しのぎのお買物をしてしまったり、家に帰っていざ着てみたら似合わなかったり、持っているのものと同じようなアイテムを買ってしまったりすることはよくあると思います。それを未然に防ぐには、お洋服を買うときに一人ひとりと向き合って、その人とお洋服が「持続可能かどうか」を一緒に考えることをお手伝いしています。こうした取り組みを通して、お洋服を大切に着てもらい、廃棄を減らすことにつなげたいと思っています。
そして、10着の1年間しか着ることができない短いサイクルの洋服を着るより、1着の自分にとって長くお付き合いができ、心から両想いと思える服の出会いを提供できればと思います。
またこのような短いサイクルの「過剰消費」も深刻な問題ですが、作る側の短いサイクルの「過剰生産」も早く辞めなくてはいけないシステムです。私たちは本当に多くのものを作りすぎました。
Enter the E ではコロナ禍で新たに「顔が見えるオンライン受注会」の開催を始めました。
これまでも少量仕入を行っていましたが、コロナ渦では在庫ロスは防ぎ切れませんでした。
だから、「必要なものを、必要な分だけ」受注してお届けすることをはじめました。ZOOMをつかって毎回ご紹介するブランドのファウンダーと皆さんをつないで、ビデオをオンにして文字通りお互いの「顔が見える」ようにしています。
今までの構造では、作り手と買い手のつながりが無く、お互いの「顔が見えない」状態。でも、作り手の想いを直接聞くと、その後お洋服を着るときの感覚は変わってくるものです。
1つ1つのプロセスには物語があります。そういうエピソードを知っていると、デザインだけを気に入って買った服よりきっと大切にできると思うし、より愛や敬意が生まれると思うのです。
関わり合うステークホルダーの「顔が見える」状態で、両者の間にあるズレや認識不足を改善すると、必要なものが見えてくるとも思います。
作り手も次第に顔が見えない相手に矢継ぎ早に商品をつくり続けるのではなく、顔の見える相手に必要なものだけ作るようになる。これはお互いにとって良いムーブメントだと感じています。
3.「売って使って捨てる構造」や「使い捨て社会」から輪廻転生の社会を構築
売って終わりしないというのもEnter the Eの立ち上げ時からのスローガンです。9月に新しく立ち上げようと思う仕組みがインヘリサキュラー制度(仮)です。インヘリテッドは日本語で引き継ぎとサーキュラーは循環を意味します。本当は起こってほしくないことですが、何らかの理由で着なくなってしまったEnter the Eの洋服を大切に着てくれる別の方に引き継ぎ、バトンを繋いでいきみんなで洋服の寿命を延ばすサービスです。
お買い上げいただいた商品を再度買取りさせていただき、必要な方に安価な価格で提供させていただきます。
一見聞くとただのBuy&Sellのように聞こえますが、どこの誰かがどんな風に買われて使われてきたのかこちらの過程も見えないと、ただただデザインや価格と状態で判断してしまいがちです。例えばメルカリなどでお洋服を買うとき価格で判断し、結局大事にしない服をまた買って着なくなるということが起こります。きちんと間に入り、洋服と人のお見合いをして引き継ぐことをすることを重視したいと思います。
次の世代に引き継げるほど、みんなで大切に着て廻し、最終的にはクロージングライブラリー(洋服の図書館)にして洋服の経年変化を楽しむレンタルもいずれはしたいと考えています。
リサイクルは本当の最終段階であり、「リサイクルできるから、循環できるから破棄してもいい」ということにならない社会にしたいと思います。しかし最後の最後はEnter the Eが責任をもってリサイクルし、新たな衣類資源として活用させていただこうと思います。服から服になる資源に変える技術を活用しながらゴミ箱行きにさせないまた資源になる社会を目指したいです。
4.「これ以上悪くしない」から、「環境再生」へ
これはまだ事業の中では行っていないのですが、私が続けているライフワークの1つが綿花栽培です。
1で掲げた「これ以上悪くしない」ということでは、本質的な問題は解決しないとして当初は「服で環境再生」を考えていました。
日本には埼玉県ほどの耕作放棄地があり、この十年でまた旭川市ほどの面積8,400haが増えてしまいました。未来のことを考えるとこのまま放棄してしまう土地が増え続けると炭素を吸収してくれる土地が減り、温暖化や気候変動につながります。綿花栽培ををはじめて毎年少しずつですが、無農薬のオーガニックコットンを貯めていきました。昨年は初となるNO肥料、No水の自然栽培に挑戦し、収穫することができました。
最初はじめたきっかけは「人や地球に迷惑をかけずに洋服も楽しめる社会の両立」と「地球への恩返し」でした。
20代の頃、大の洋服好きだった私は、洋服が引き起こしている環境破壊や労働搾取の問題を知り、ただただショックで、自分を責める気持ちが湧き起こりました。そして破壊をしてしまった地球に申し訳なさと、せめてものことで洋服で恩返しができないかを模索していました。ちょうど当時気になっていた耕作放棄地やコンクリートの影響で進む温暖化の問題とリンクし、
「コットンを育てることで炭素を吸収し、光合成をおこなえる健康な土地作り」と「生産過程を全て自分たちで行えば、完璧な透明性を確保でき、生産過程における見えない劣悪な問題が解決」と考え、自分で育てて自分で着る「自産自着ビジネス」の事業化を本気で試みました。
事業化のためにテスト栽培を色々試してみると綿はいろんな土地で育てることができました。元水田だった土地や耕作放棄した土地、木の根がはってしまった土地などでも可能でした。育ち方には大差がありますし、規格されたようにはいかないので商品化するまではいきませんが、綿を栽培した後の土地は結果として炭素や水分を吸収してくれる元気な土地に生まれ変わりました。
今は個人の活動としてでしか行えてませんが、いずれは事業の柱として地球を健康にする自産時着の洋服をみなさんに届けられるように続けていきたいと思います。その名前をリジェネラティブファッションとして多くの方を巻き込めていけたらと思います。