
ボーダレス・ジャパンの鈴木です。
SDGsやESG投資、CSV経営、ダイバーシティ経営etc...、
社会におけるビジネスのあり方を問う言葉がたくさん登場しています。
そんな中で、"ソーシャルビジネス"に対する認知も拡がってきていますね。
ソーシャルビジネスに対しても、さまざまな認識があると思うので、
その考え方、あり方について、書いていきたいと思います。
今回は、ビジネスパーソン向けにちょっとカタめに!!
1.そもそも"ビジネス"とは
ビジネスは、"価値"を生み出すための仕組みです。
よく言われるのは、顧客に対する価値のことで、もちろん非常に重要です。
でも、それだけではありません。
共に働く"仲間"(僕は従業員というコトバを使わないので)や仕入先などの"パートナー"、地域の人々や未来世代の人々に対しても、価値を提供しています。
ビジネスは、決して一人では成り立ちません。あたりまえですが。
そのビジネスの機能をまとめると、2つだと考えています。
■「コミュニティ」
人々が助け合い、支え合いながら実現していくのがビジネスです。
その意味で、コミュニティ機能というものが、もっとも大切なものなんじゃないかと思います。顧客や仲間、パートナーや地域の人々、未来世代とのコミュニティをつくり出すところに、ビジネスの本質があります。
未来世代、という子供たちや、まだ生まれていない人たちと、コミュニティをつくる!?というのは、想像しづらいですよね。
でも、私たちの活動はすべて、未来の人たちが生きていく"地球"や"社会"に影響を及ぼすこと考えると、彼らは大切な"もの言わぬ審判"としてコミュニティに無くてはならない存在です(実際は、規範や倫理観として)。そして、彼らが生きていきやすい状況を残していくために活動する、それが彼らに対する価値です。
■「価値の創造・分配(シェア)」
そうやって繋がりをもった仲間やパートナーと共に、顧客に対する価値をつくり出し、おカネというツールを受け取ります。目に見えるものの価値は認識しやすいので、モノやサービスとおカネを交換しているように思いがちですが、そのおカネには"感謝や共感、応援"といった目に見えない価値も含まれています。
そして、おカネを介して受け取った価値を、コミュニティのメンバーと分かち合うことで、ビジネスをサステナブルにしていくことが可能になります。
コミュニティの維持は、社会性が強調されますが、続けていくための原資=おカネという経済性との両立は、とても重要です。
2.はたして「人」と仕事をしているのか?
でも実際には、これらの機能がうまく使われていません。
バランスが悪いと言った方がいいかもしれません。それはなぜか。
これまでのビジネスは、顧客に対する価値の最大化を追求し、たくさんのモノやサービスを、
-高品質
-安価
-オンタイムに(いつでも)
手に入る状態をつくるために、努力してきたからです。
顧客がおカネを払ってくれる以上、顧客ファーストになるのはあたりまえ。だから今、私たちは便利で快適に生活できるようになりました。
でも、実はここにビジネスの構造上の問題が隠されています。
高品質、安価で、オンタイムに、たくさんの人々へ。
それを突き詰めようとすると、必然的に"効率"を追求します。
結果、組織は肥大化し、機能別に専門分化。サプライチェーンは長くなっていきます。
顧客の要請に応える、という"脅迫観念"と言っても過言ではない圧力(実際は、ビジネス側の過度な押し付けや思い込みが圧倒的に大きいですが)によって、効率化がどんどん推進されていきます。そうすると、
「人」が見えなくなるんですね。顔が見えなくなる。
人を業務ロボット化し、人間性が蔑ろにされていきます。
個性は悪。
仲間同士やパートナーがどんな人なのか、どんな状況なのかよく知らない。
仕入先のその先にいる人たちのことはもっての他。
話すのは業務のことばかり。大きな組織だと顧客のことすら分からない。
さらに、いまの業務を正確・迅速に遂行できない、もしくは通常よりもコストがかかってしまう人は、仲間にできない。
コミュニティって、人間同士がお互いを理解し、認め、活かしあい、助け合うことで成り立ちます。
でも、効率を前にしては、そのための取り組み自体が非効率だとなってしまう。
人よりも、数字、時間、ルールが大切になってしまいます。
※組織論を書き始めるとキリがなくなるので、それはまた別稿で。
3.誰に分配(シェア)している?
数字、時間、ルール。それを言い換えると売上、利益です。共通言語は、常におカネ、数字になります。
冒頭に書いたように、顧客から受け取ったおカネは、コミュニティで分配します。仲間、パートナー、地域や未来世代といった社会や地球。
みなで分け合い、共に生活していくわけですが、その分配率もバランスを欠いています。
ここで、資本家、投資家という存在が登場します。
ここ最近の日本企業は、社員の給料が上がらない一方で、配当や経営者報酬が高くなっています。特に配当が。
汗水たらして働く人たちよりも、資本を出した人が、リスクを負ったという事で、莫大な報酬を得ています。
リスクを負ったことに対するお礼としては、あまりにも莫大な"既得権"です。
そして構造上、企業は株主のものなので、多額の配当を支払うと共に、その原資となる利益を増やすため、さらに効率を追求する。そしてそれを実行する経営者は、多大な報酬を得るわけです。
本来、コミュニティーの仲間たちと分かち合う"価値"は、"おカネ"というカタチに姿を変え、その多くが資本家に流れる構造になっている。
仲間、パートナーに対する分配はもとより、地域や未来世代の人々をも含めた地球や社会への分配に、十分に振り向けられないのです。
税金は、その分配方法のひとつですが、それだけでは足りません(節税はもってのほかです)。
社会を良くする、できるだけ地球に負担をかけないための"新しい事業や取り組み"もまた、社会への分配方法のひとつです。
後編へつづく。
4.ビジネスに社会のための新しい取り組みができるのか?
さまざまなビジネスが、新たな取り組みによって生まれます。
みんな最初は小さく、十分なのは熱量だけ。何もかもがないないづくしで、でもそんな中で"顔が見える"みんなで力を合わせて頑張ったからこそ、成功した。これだけは間違いありません。みんな、チャレンジャーだったわけです。
そのスタートアップは、生きるか死ぬかの瀬戸際で、一刻も早く利益を生み出さなければならないとなると、よほど地球や社会のことを考えてない限り、できるだけ、効率よく利益が出せそうな領域に挑みます。基本的には、顧客のニーズを満たすことを追求しますよね。
ビジネスは通常、不満、不便、不快といった"顧客ニーズ"から、ビジネスモデルを考えます。
さらに、ビジネスが大きくなって、さらなる効率を追求するようになると、これまでのリソースを使って追求できる領域に事業を拡げようとします。
"利益が出なさそうな"新たな市場や小さな市場、社会のための取り組みには手を出しません。
社会的責任として、CSRを実施すること事態は非常に素晴らしいことです。でも、ビジネスの構造上やはり、利益が出なくなれば、本業集中ということで、取り組みは潰えてしまいがちです。
やはり、ビジネスが社会に対する分配をするのは、これまでの考え方だと、非常に難しいのです。
5.ソーシャルビジネスの本質
そこで登場するのが、「ソーシャルビジネス」です。
ビジネスであることに変わりありません。
よく「ソーシャルビジネスって社会貢献するビジネスでしょ」、と言われますが、実はそれだけではありません。社会貢献というコトバの定義次第ですが、何かしらで人々に貢献することを社会貢献と言うならば、一般的なビジネスも、社会貢献をしていると言うことができるからです。
ソーシャルビジネスが一般のビジネスと違うところはいたってシンプルで、
「社会の不条理や不合理によって、生活に大きな支障をきたすような"社会問題"を解決するため」に、困っている当事者や状況を、ビジネスに"巻き込む"点にあります。
これまでのビジネスが、非効率だとして対応できなかった社会問題。
貧困、飢餓、差別偏見、環境破壊、過疎化、あげればキリがありません。
ビジネスの世界とは異なるものとして、行政やNPO、NGO、国際機関に任せてきた領域です。
その社会問題を解決するビジネス。
言い換えれば、これまでのビジネスがつくりあげてきたいまの社会を変えるために、"非効率をも含めて社会を再構築する"。
それがソーシャルビジネスの本質です。
6.ソーシャルビジネスが追求するもの
ソーシャルビジネスは、ビジネスである以上、売上、利益を追求します。
でも、事業目的が、社会問題解決そのものである以上、売上、利益よりも大切なものがあります。
それは、"ソーシャルインパクト"。
社会課題を解決できたかどうかを具体化した指標です。
このソ-シャルインパクトの最大化を追求することが事業そのものの目的であり、その実現が結果として、売上や利益の最大化に繋がるビジネスモデルになっています。
売上や利益を目的化してしまうと、上にも書いたように、地球や人が蔑ろになってしまいます。
一方、ソーシャルビジネスは、地球や人を中心に据えるからこそ、人々が困っている社会問題を的確に捉え、その解決を実現するビジネスモデルをつくり上げられる。
地球や人が、数字やルールよりも大切なのです。
地球上のすべての生き物の幸せのために、コミュニティのみなと共に、互いを理解し、認め、活かしあい、助け合って社会問題を解決していく。
それが、ソーシャルビジネスが追求するものであり、それは、ビジネスがもつ2つの機能、「コミュニティ機能」と「価値の創出・分配機能」を最大限、バランス良く活用するものなのです。
ソーシャルビジネスとは、社会課題の解決を継続的、拡大的に進め、かつ、ビジネスが本来もつ素晴らしい機能を最大限に発揮できる、
"古くて新しいビジネスのあり方"
なんだと思います。多くの企業や人々がこのあり方を知り、みなで共に
"今よりもいい社会を未来世代に"引き継いでいける、
そんな世の中にできるよう、引き続き、突き進んでいきたいと思います。
■上に書いた考え方を、ボーダレス・ジャパンの定款前文にまとめています。
■ソーシャルビジネスの詳しい説明は、以下をご覧ください。
「ソーシャルビジネス」が『ソーシャルビジネス』である理由