
こんばんは。ボーダレス・ジャパンの田口です。
久々にブログを書こうと思いました。理由は、ここのところなんだか「副業解禁」がCOOLなことのように取り上げられていますが、僕は少し危ないなぁと思っているからです。
ちょっと待って、と
多くの人は会社員、つまり雇われている側なので、このニュースを聞いて“自由”になった感じで嬉しいと思っているかも知れませんが、
ずっと経営をやってきた僕には別の景色が見えてきます。少し怖い景色が。
実はこれ、経営者、つまり雇う側にとっては、もっと嬉しいニュースなんだよ、と。だからこそ、こんなに広がろうとしているんだよ、と。
■この「副業」の動きは社員のために始まったのか?
考えて見て欲しい。大企業を中心に、なぜ最近になって副業解禁し始めたのか?
会社がいきなり「社員の幸せ」を考え始めたから?
そんなことなら、あの転勤制度を何とかしてから言えと僕は言いたい。
家族を振り回すあの奴隷扱いのような制度をまず辞めろと。
すいません、話が脱線しましたm(_ _)m
つまり、企業が社員のために副業解禁をはじめたと考えるのは少し安直かもしれない。
■優秀な人材を確保するため?
ニュースなどを見ると、副業解禁の理由として「優秀な人材を確保するため」と書かれたりしていますね。
優秀な人間であればいろんな仕事の依頼などが個人的にくるから、その時に副業規定があると動きにくい。だから、そこに自由度をもたせて優秀な人間をつなぎとめるんだ、と。
それも一理あるかも知れない。でも、それは表面的な理由にすぎないと思います。
なぜなら、そんな小手先のことで一流人材はつなぎとめられるもんでもないし、一流の人材がその企業に残っているのは、そこにいる方がデカいこと・面白いことができるから。
給料は十分もらっているから、副業がダメならボランティアで関わればいいと思ってる。だから、会社にとって欠かせないような一流人材にとって、実は副業規定なんかそんなに関係ない。
■じゃあ、誰のための副業解禁なのか?
これをリアルに考えてみたい。実際に、誰が副業する?正確にいうと、誰が副業デキル?と。
自分で稼いでもいいですよ、と言っても、会社の看板も何もなく仕事がとれるような人が実際に何割いるだろうか?
副業OK!と聞いて嬉しいと思ってる皆さんは、実際に個人でどれだけの仕事がとれるだろうか?毎月それでいくら稼げるだろうか?
つまり、副業で稼げるような人はよっぽど凄い人だと思う。
自分でも稼げるような人は実際にはすごく少ない。ごくごく少数だと思う。
大体、会社でも勤めながら、会社が終わったあともまだ働きたいという人がそんなにいるだろうか?
なのに、なぜこんなに副業・副業と叫ばれるのか?
■答えは、企業にとって都合がいいから。
今までは、みんなが一つの会社にだけ勤めていたから、彼らの生活は企業からの給料一本にかかっていた。
だから、その面倒を見るのが企業の大きな責任だった。
社員が結婚して、子供が生まれて、学校に通わせて、老後の親に仕送りをして、そういうライフステージに合わせて、彼らの生活を担保するために給料を上げ続けなければいけなかった。
給料というのは「実力を正当に評価するという側面」と同時に「生活を保障するという側面」があった。それが、企業というものが社会における大切な器であるゆえんだった。
だけど、副業OKとなったらどうなるだろうか?
他でも収入を得ている社員に、何故会社として生活保障しなければいけないの?
あなたが経営者だったらそう思わないだろうか?
これが僕が、この動きを少し怖いなと思っている理由です。
■給料を上げ続ける義務からの解放
他でも稼いでいいんだから、あとは自分次第だよね、と。
会社としては、あなたのアウトプットに対してはしっかり払うけど、それ以上を保障する必要はないよね、と。
つまり、一言でいうと「社員の給料を上げ続ける」という責任から逃れられるということ。
これが、大企業を中心に、副業解禁の流れが起こってるほんとうの理由だと僕は思っています。
でも、さっき言ったように副業して稼げる人なんて一握りなんですよ。
だけど、副業解禁した会社の給与制度はどう変わっていくでしょうか?
“生活保障のために少しずつでも毎年給料をあげなきゃ”という力学は完全に失われる可能性があります。完全な実力主義になっていくかも知れません。
そうなると、ごく一部のすごく優秀な人は給料も高くなり副業でも稼げてハッピーかも知れませんが、副業では稼げない大多数の人の給料はずっと低いまま変わらない…
一部のエリートだけがどんどん金持ちになっていき、残りの大多数は生活が苦しい、苦しいと言っている。。
そんな社会になってしまわないだろうか、、、と少し心配になります。
■だからボーダレスは副業はダメ・・・?
「働き方の多様化」という大義名分をもったこの副業の流れは加速するかも知れない。さらには、企業における経済合理性もある。
だから、ボーダレスとしてはこの流れには乗れない。
副業OK!とカッコよく言ってやりたい気持ちはあるが、社員たちの将来を考えるとやはりNOなんだ。
ボーダレスでは常々「給料とは社員の頑張りに正当に報いるものであると同時に、豊かな生活を実現する生活保障でもある」と言ってきた。
投資が続く小さい会社だから、大企業のような給料水準にすぐには上げられないから、子ども手当などを始めてよりお金が必要な人たちから順番にケアしてきた。
だから、申し訳ないがボーダレスでは副業は断固禁止です。
そして、みんなの給料を上げ続ける責任をしっかり果たしたい。
だから、みんな副業はこっそりやってね♡ということです。
“こっそり副業”スタートですね(笑)
企業は副業解禁する!とか言わないで、ちゃんと社員の生活をこれからも守る。
社員が副業したけりゃ勝手にさせたらいい。いちいち制度にする話じゃない。
社員も副業解禁して!とか言わないで、自分が好きなように働けばいい。
副業したければやったらいい。あなたは企業の奴隷じゃないんだからいちいち許可なんかとる必要ない。会社に迷惑をかけない大人のケジメをもって。
だから、
「副業」という言葉はそろそろ終わりにした方がいい!!
というのが僕の結論です。
もっと自由に働けばいいと思う。
≪ボーダレスグループ代表田口の経営ブログ≫
・経営とは「労使関係」ではなく「同志関係」をつくること。
・失敗する起業家は「ビジネスモデル」から考える。
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