
先日、ソーシャルビジネスのスタートアップを目指す起業家たちが、プランをブラッシュアップする場(Unreasonable Lab Tokyo)に、メンターとして参加させて頂きました。
10チームが集い、白熱した状況で、あれやこれや議論を交わしていました。プランニング段階とはいえ、熱い議論は良いですね。みなさん真剣勝負です。
僕の担当はそのうち5チーム。環境問題、シングルマザーの相対貧困問題など、解決すべき問題を取り上げている。熱心に解決を目指す素敵な皆さんでした。
さて今回、メンターとしての感想を10チームの皆さんにお話ししたので、その内容を紹介します。各チームに共通する、「ソーシャルビジネス」として、ブラッシュアップすべき点についてです。
当日の会場の様子、みなさん真剣です
1.ソーシャルコンセプトは具体的に設定しているか?
皆さん熱心だったのですが、話を聞けば聞くほど、「フワッ」としていて、いまいち具体性がないものが多かった。誰が社会課題で困っていて、どんな状況にあるのか、どんな社会的障壁を取り除けばよいのか、が良くわからない。このような場合、ボーダレス内ではよく、「顔」が見えない、という表現を使います。
この具体性というのは、
誰が、
どんな状況にあり、
どんな社会的障壁によって困っているのか。
どうすれば、彼らは今の状況を打開できるのか。
彼らにとって何がゴールになるのか。
ということ。これらを明瞭にした上で、「誰に、何を、どうやって」をシンプルに設定します。これを僕らは「ソーシャルコンセプト」と呼んでいます。
ソーシャルコンセプトが具体的かつシンプルに設定されていれば、話を聴いている方は、困っている当事者の「顔」が容易にイメージできます。いつの間にか、「その問題を何とかしなければ」と、巻き込まれてしまう。
ビジネスでは、「誰に何をどうやって」、というビジネスコンセプトをちゃんと設定しなさい、とよく言われると思いますが、ソーシャルビジネスでは、ビジネスコンセプト以前に、ソーシャルコンセプトを具体的に設定しなければ、話になりません。
順番は常に、1.ソーシャルコンセプト → 2.ビジネスコンセプト。
ソーシャルコンセプトが不明瞭なのに、ソーシャルビジネス創ってます、やってます、なんてボーダレス的には口が裂けても言わない。不明瞭なものは、普通のビジネスです。
2.ソーシャルインパクトを明瞭に伝えられるか?
そしてもう一つ、ソーシャルインパクト。詳しいことは別途書きますが、簡単に言えば、社会課題の解決にどれだけ寄与できたか。ソーシャルビジネスの目的そのものですね。
ソーシャルコンセプトで具体化された当事者の状況が、ソーシャルビジネスによって、どれほど変化したか。目標に対してどれほど近づいたのか、または超えることができたのか。同じ課題で苦しむ何人の人々が、解決できたのか。
コンセプトがあいまいだと、インパクトを具体的に説明することはできません。
後々、「誰のためにやってるんだっけ...?何のために...?」と、そもそも論を問うてしまい、混乱することになってしまいます。
ソーシャルビジネスをやるのであれば、ソーシャルコンセプトとソーシャルインパクトの具体的な設定は必須条件。その上で、ビジネスコンセプト、ビジネスモデルを構築していきます。
これらが
「ソーシャルビジネス」が『ソーシャルビジネス』である本質的な理由です。
加えて、ソーシャルビジネス(普通のビジネスにも共通する)の「スタートアップ」で大事な考え方を2つお話しました。
3.リサーチすれば...という幻想
各チームにいろいろ疑問点をぶつけると、もっと「リサーチ」します、という答えが返ってくることが、本当に多い。
もちろんリサーチは必要です。でも、具体的なコンセプト設計もビジネスモデル仮説もなしに「リサーチ」するって、できないですよね。
リサーチというのは、あくまで具体的な仮説があった上でそれが正しいかどうかを明らかにするもの。仮説がないリサーチは、リサーチにあらず。調べたり聞いたりすれば、答えが見つかるなんて、よほどの偶然ですし、もし見つかったとしても、常識的であり新規性がないものがほとんどです。
4.やってみなければ前には進まない!
ソーシャルビジネスのプランニングは、
ソーシャルコンセプト
ソーシャルインパクト
ビジネスコンセプト
ビジネスモデル
を具体的に設定し、それが正しいかどうかを検証して、修正して、また検証して、と、進んだり戻ったりしながら、スピーディに精度を高めていきます。
そして、これ以上考えても「わからない」というところまで突き詰めたら、実際にスタートする。わからないことを、いつまでのうんうん唸っていても、結局何もわからない。そうやって唸っている間、困っている当事者の状況は何も変わっていません。
プランをいくら精緻に練ったところで、実際に事業を始めたら、これまたいろんな問題にぶち当たり、プランをたびたび修正することになる。「100%うまくいくプラン」が、「ほぼ存在しない」以上、どんなに時間をかけても時間を浪費してしまうだけ。
だいたいいけそうだと分かった時点でスタートし、修正を繰り返した方が、成功の「押しボタン」に到達する確率は圧倒的に高くなります。この点は、普通のビジネスと同じですね。いわゆる「リーンスタートアップ」です。
ちなみに、これまでの経験上、「ソーシャルコンセプト」を修正した例はありません。これが意味するのは、ソーシャルビジネスの根幹である「ソーシャルコンセプト」は、明確に設定したら、事業の本質である以上「変えない」、ということです。一方、ビジネスコンセプトやビジネスモデルは、事業目的を達成する「方法」なので、こちらを修正することは多々あります。
あれだけ一生懸命にやっている各チームのみなさんには、是非、実際に事業をスタートして、社会にインパクトを出してほしい。
ソーシャルインパクトを追求する仲間として、応援していきたいと思います。
ところで、もうすぐボーダレスでは、社会課題を解決したいと本気で考える社会起業家を募集する「新たな取り組み」がスタートします!
いくら良いプランを描けても、次に待ち構える関門は、資金、人材、ノウハウetcと多々あり、リーダーが事業だけになかなか集中できないのが現実。結果、うまくいかないケースが本当に多い。
ボーダレスが社会起業家のプラットフォームとして存在する理由はまさに、未来の社会起業家に、確実性の高いソーシャルビジネスのスタートアップ&成長環境を提供し、ソーシャルインパクトを最速最大化していくこと。
リリースを、お楽しみに!