
難民問題の解決のためにできること
世界で増えつづける難民。
そんな難民問題の解決にビジネスで取り組む企業や団体を紹介します。
第1回:ピープルポート株式会社
第2回:NPO法人 WELgee(取材中)
第3回:株式会社大川印刷(取材中)
◁前のページでは、「日本の難民問題、現状と課題」について紹介
「心から安心できる居場所をつくる」株式会社ピープルポート
代表 青山明弘さん
――まずは事業について教えてください。
ピープルポートでは、企業や個人から使用済みのパソコンを引き取り、中身の部品を入れ替え整備することで再生。再生されたパソコンは「環境負荷のもっとも少ないエシカルなパソコンZERO PC」として販売しています。
14名の社員のうち、4名が日本に難民として逃れてきたメンバーです。
パソコン再生・整備の工程で、日本人のメンバーと同じ給与水準、同じ社会保障を得て、正社員として働いています。
――もともと、難民の方を雇用するためにはじめた事業だと聞きました。寄付などの支援ではなく、働く場所を用意しようと思ったのはなぜですか。
理由は3つあります。
1つは、3年以上かかる難民認定を待つあいだも自活していくために、安定的な収入を提供できること。
2つ目は、尊厳というとちょっと難しいけど、「働く」ことは収入面の安定だけでなく、人が生きていくという行為に深くかかわっているからです。
当社で働くメンバーは、20代後半から30代前半で、母国では学生だったり、バリバリ働いてた人たち。
日本に来て生死の危険から解放されたら、自分を成長させたいとか、自分の力を社会に役立てたいと思うのは自然なことですよね。寄付や支援を受け取ることはありがたい反面、長い期間それが続くと自分への無力感を感じてしまうというのも分かります。
3つ目は、難民認定の厳しい状況があります。彼らの能力や技術が日本社会に貢献できるとなれば、難民という形だけでなく、例えば高度人材という在留資格で日本にいられるようになります。
こうしたことから、働く場所を提供することに強いこだわりを持って事業を作ってきました。
――働くことを通して誰かの役に立っているという実感が持つのは大切なことですね。
そうですね。
日本語が話せないと働き口としては肉体労働が多かったり、勤務時間や環境が過酷なものが多いんです。
給与の支払いが不安定な職場もあると聞きます。
安心できる環境でしっかり働いて、安定した給与をもらい、好きなものを食べたり買ったりできる。家族に仕送りもする。
自分の生活を自分の意志で送れることがうれしいのは、私たちも同じですよね。
でも、働く場所があるだけでは足りないことも分かってきました。
――「働く場所だけでは足りない」とはどういうことですか?
以前はパソコンを催事で販売していたため、日本語ができるメンバーがオフィスに不在のことが多く、孤立感から危険な母国へ帰ってしまったメンバーがいました。
いつもと違う様子に「何かあった?」と声をかけたり、時事問題や将来の夢を語ったり。
働けるだけじゃなく、そうした人とつながりを持てる場所であることが大切だと痛感しました。
そこからはECでの販売に切り替え、ランチをみんなで食べるようにしたり、一緒に過ごす時間を大切にしています。
体調の悪いようなら病院に付き添ったりもしてます。
――いい職場ですね。
普通ですよ(笑)
社員は海外に滞在したことあるメンバーも多く、外国で生活する難しさを体験しているんですね。
支援する側とされる側といった関係性ではなく、困ったときはお互いさまという感じが近いと思います。
難民であることを意識しなくていい、自分のままでいていいんだと思える場所があるって大切だなと感じています。
――日本の低い難民認定率や、入管のあり方は世界的に問題視されていますね。私たちの難民への無関心もその原因の一つと言われます。私たちにできることはどんなことがありますか?
難民に関するニュースに声をあげたり、友人に伝えることも大切なアクションです。
今、ウクライナから何十万という方が国外に避難しており、日本も難民の受け入れを表明しています。
賛同いただけるなら、こちらから署名できます。
また、ZERO PCをたくさんの人に使ってもらえたら、もっと多くの人を社員として迎えられるので、商品やサービスを磨いています。
不要なパソコンを送っていただけるのもありがたいです。
パソコン以外にも、普段使っているものが自分の手に届く前にどういった人たちが関わっているか調べてみるというのもおすすめです。企業は自社商品のユーザーの声をとても大切にしているので、消費者として要望することが大きな企業を動かすことにつながっていきます。一個人の声の強さをもっと実感してほしいなと思います。
次のページ▷ 難民と企業をつなぐNPO「WELgee」(近日公開)
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