「農家さん・メンバー・お客さんとの信頼関係が命」

だと、ずっと言い続けてきた私たちの事業。
でも、そんな関係を築くのは全然簡単なことではなくて、ずっと試行錯誤と衝突の毎日が続いていました。
なんで伝わらないんだろう、と涙したことも。

すべてをさらけ出して、家族をめざして歩み始めてから、少しずつ関係が変わっていった様を書いた前回(ヒーローにはなれない。でも、家族になろうよ。)から1年。改めて「信頼関係」について書いてみようと思います。

まさかのジンジャー特需

2019年末。まだ、コロナの足音は遠く、私も日本での営業活動の合間にミャンマーへ通う毎日を過ごしていました。
そこに突然かかった、テイさん(副社長/ミャンマー代表)からの電話。

「なおさん、まずいです。ジンジャーがミャンマーですごく高く売れてます!

パッと聞いた感じでは、農家さんにとっていいことじゃないか、と思えるこの話。私たちにとっては、非常事態の幕開けでした。

そもそも、私たちが農家さんに栽培してもらっているハーブは、日本への輸出が前提。
ミャンマーでの需要はほとんどない品種が多く、「農家さんは私たちのために栽培し、私たちに売る」というルールが崩れることはありませんでした。
(レモングラスやジンジャーなど、現地で需要のある品種も一部ありましたが、市場で取引される量はとても少なく、売れても安価なため、私たち以外に売るメリットは、農家さんにはほとんどなかったのです。)



ですが、今回ばかりは話が違っていました。

アメリカの企業が安価なジンジャーを求めて、ミャンマー市場へ参入。大量に買い占めたために、市場でのジンジャーの値段は、今まで見たことがないレベルに値上がりし、私たちの買取価格を大きく超えてしまったのです
しかも、海外輸出向けですから、大量のジンジャーが必要になっているとのこと。市場での価格が少々上がろうが、売れる量も少ないのだから関係ない、といった理論が全く通用しません。

私たちは全員、青くなりました。
「農家さん、私たちに売ってくれなくなるかも…。」

板挟みな私たち

私たちのハーブは契約栽培。すでに、一定の量はお客様から注文をいただいた上で栽培を始めています。
ミャンマーで高く売れるので、私たちは買い取らなくてもOK!なんてわけにはいかないのです。

毎年同じ値段、同じ高品質を信じて、契約をしてくださっているお客さんの信頼を裏切るわけにはいきません



でも、一方で、私たちには、農家さんの気持ちも痛いほどわかります。

私たちの買取価格は、農家さんの生活コストを基準に算出し、農家さんの日々の暮らしを支えられる額に設定しています。
しかし、超小規模な土地しかなく、ミャンマーの中でもより生活に困っている彼らの暮らしは、そう簡単には楽になりません。

借金をしなくても農業ができる、子供が学校に行けるようになった、と喜んでくれていても、隣にはもっと余裕のある生活をしている人がいる。
その人たちのように生活がしたい、と思う気持ちは、あって当然。そのために、少しでも高く売れる市場にジンジャーを売りたい、という気持ちも、あって「当然」だと思いました。

信頼はキレイな美談じゃない

私たちは、バラバラになりそうな気持を抱えながら、農家さんの家をまわりはじめました。
「今年、市場で高く売れるのは知っています。でも、私たちに約束通り売ってもらえますか…?

すると、農家さんが、みんなうなずいてくれるのです。

「あぁ、約束してたからね」って。



私は、横っ面をはられた気がしました。感動して、嬉しかっただけじゃありません。農家さんの信頼が、重かった。

これは、ミャンマーの人がみんな素朴でいい人だから、約束を守ってくれた、とかいうキレイな美談じゃない。
来年も、再来年も、私たちと一緒に仕事をしたいという農家さんからの意思表示。今年、思いっきり儲けることはできなくても、毎年必ず買い取りを続けてくれるだろうという信頼の重み。

私たちは、これまで続けてきた買い取りによって、農家さんに未来を信じてもらえる存在になっていました。それは、借金に追われて、今日明日の暮らしばかりを考えていた数年前の農家さんとは見られなかった景色。

信頼はこれまで積み重ねた時間と実績が育ててくれた。だから、農家さんとの約束は、私たちも、絶対に、絶対に守らなければならない。
約束を守って、守られて、その安心の積み重ねという重さが、信頼の答えだから。

コロナだから買い取る、絶対に

そんな中やってきたコロナ旋風。お客様からの注文は減り、私はミャンマーに渡れず、現地メンバーと農家さんもなかなか会えない毎日。

でも、絶対に、全量買い取る。絶対に、絶対に事業はつぶさない。メンバー全員、その決意は固く、何とか存続する方法を探して走り回っています。
そして、今年、とあるミャンマー企業に、生のジンジャーを約50トン、卸すことになりました。

「農家さんが約束通りの量をなかなか卸してくれなくてね…。品質が劣っていたり、市場に売られたりで困っていたんだ。」という社長さんの声。



でも、私たちが納品したジンジャーの品質を見て「直すところがひとつもない!」と驚く彼に笑う私たち。
それもそのはず。
乾燥前の生の状態で一気に卸すのは初めてだけど、絶対に品質を落とさないよう、農家さん総出で検品にあたってくれているのです。
おかげで、大満足の彼から、次はターメリックや野菜も買いたいとのオファーをいただくことができました。

信頼はキレイごとじゃなくて、これまで積み重ねてきた実績と、これからも約束を守り続けるという責任があってはじめて成り立つもの。その重さとありがたみをしっかり受け止めて、仕事をしていくことこそが、私たちの存在意義だと思うのです。