こんにちは、ボーダレスリンク犬井です。半年ぶりの投稿です。お久しぶりです。

事業も軌道に乗り、1年半前に5人だった社員も今では26人になりました。
1年半というと、僕は第一子が山奥の村で謎の老婆二人のサポートのもとダイニングで爆誕し、電気がないので携帯電話と懐中電灯で照らしながら我が子のへその緒を切ったのが一番のニュースでしたが、皆さんはいかがでしたか。

さてさて、今日はボーダレスリンクの隠れた野望について書いていきたいと思います。ボーダレスリンクという会社は、「小規模農家が誇りと選択肢を持って幸せに暮らせる社会」を実現するために、農家に必要なあらゆるリソースを循環させる地域商社の役割を果たしているのですが、実はそんなボーダレスリンクには壮大な野望があります。
そう、その野望とは、「民族同士が手を取り合える社会を地域の若者の手でつくり上げる」ことです。

少し話は逸れますが、皆さん。ミャンマーには何民族くらいいるかご存知ですか?政府発表でなんと135民族と言われています。ちなみに、僕が長くいた場所はカレン州と呼ばれ、カレン人が多い場所でした。今事業をしているのはパオ、シャン、インダーなどの民族が多いシャン州と呼ばれる地域です。それぞれに言語や宗教、文化が大きく異なります。

いずれも、植民地時代や軍事政権時代など、長い歴史の中で民族が分断され、紛争を経験している地域です。現在は多くの民族はミャンマー政府と和平合意を結びましたが、中にはまだ紛争が終わっていない地域もあります。そして、例え紛争が終わった地域であったとしても、民族が多く住むエリアでは、民族ごとの確執や偏見は絶えません。

カレン州の難民キャンプに住んでいた頃、友達に言われた一言が今でも忘れられません。「ビルマ族(ミャンマー多数派)とは仲良くするな、奴らは嘘つきで卑怯なやつらだ。」世界で最も長い紛争とも言われるカレン州での紛争によって、一度も会ったことのないビルマ族に対して、僕と同い年の若者が憎しみを込めて言った時、すごく悲しくなりました。そして、それは決して紛争地域だけに限ったものではないと思います。ビルマ族や他の民族も多いシャン州でも、こう言った話はよく聞きます。

悲しいというか、虚しいというか、辛くなりました。
一度も合ったことのない誰かを知らず知らずのうちに憎んだり、嫌いになったり、そんな社会の仕組みをなんとかしたい、そう思いました。

話は変わりますが、ミャンマーで大学に進学する若者の割合をご存知ですか?今僕がいる農村部だと10%以下です。ミャンマーでは大学に進学するためには、全国統一10年生卒業試験を受けないといけないのですが、これが最難関。多くの子供が合格せずに最高学年まで行ったにも関わらず、ドロップアウトして村で農家になります。もちろん、最終学年にもいかず、ドロップアウトする子の割合もかなり多いです。結果的に、一部は農家になり、多くは海外に出稼ぎに出てしまいます。僕はこれがこの国にとって、多大な機会損失になっていると思います。活力のある若者こそ、国を立て直す力になるのにと。

2年ほど前、事業を始めてしばらくした頃、大卒の子ばかりを雇っていたんですが、採用に苦労し、ふと現地の子を雇ってみようと思いました。10年生試験に2年落第したインダー族の彼は、大学進学を諦めるも、実家の畑の面積がすごく狭いので、生計を立てるのに苦労していました。始めは肥料運びの日雇いとして来ていたんですが、事業立ち上げ当初の、早朝に店を開けて夜遅く帰る僕たちのスケジュールにも、文句ひとつ言わずについて来ました。次第に、農業技術のことを技術担当者にくっついて学び始め、PC操作や接客、店の管理を任せられるようになり、ついに一年後には村を担当するフィールドマネージャーの一人になりました。そして技術や知識なんかより素晴らしいのは、彼が「僕は自分の地域の農家のためにもっと農業のことを勉強したいんだ」なんてことを言ってくれることです。マインドが素晴らしい!

僕は、この「民族間の隔たり」と「地域に眠る若者」を掛け合わせることで、地方から民族が手を取り合う社会を実現できると考えています。僕たちの目標はアグリセンター全国制覇です。ミャンマー中の小規模農家にサービスを届けます。

そしてそれは、各地域に眠る、各民族の若者たちが手を取り合って成し遂げられなければなりません。様々な地域の、様々な民族の若者が、自分の地域の農家の現状を変えるべく、ボーダレスリンクという看板を背負って一生懸命奮闘する。これまで出会ったことのなかった民族同士も、年1回でもいい、半年に1回でもいい、各地域の若者が集う社員総会で、自分の地域はこーだとか、そっちの地域はどうしてる?とか、一緒になってどうやって社会を変えるか手を取り合って考える。そんなことができたら、あいつは何民族だからとか、こいつは何教だからだとか、きっと言わないはず。

民族も宗教もそれぞにあっていい。それぞれを尊重し、大切にし、一緒に手を取り合って地方から若者が社会を変えることが絶対にできるはず。きっと彼らは、経済を変えるだけじゃなく、社会を、政治を動かすようなミャンマーの希望の星になってくれるはず。そう信じています。

今では会社の社員はパオ族を始め、シャン、ダヌ、インダー、カチン、ビルマ族と多様になり、社員のほとんどは都市部からではなく、農村部出身の若者たちです。今ある小さな輪をもっともっと大きくし、ミャンマー全国の少数民族が手を取り合って社会を変える姿を、数年後に皆さんにお見せできればと思います。