
突然ですが、昨日から、個人的小プロジェクトとして、養鶏を始めました。
まずは小さくやってみながら、小規模農家にとっていちばん良いビジネスモデルを構築するためです。今アルファジリがやっている、農産物の契約栽培・流通事業と同じように、鶏肉・卵の契約養鶏をやるのか、それともマイクロファイナンスで資金提供するのか、そういったモデルを考えているところです。
農業の中でも、一番リスクが低いのは畜産?
そもそも、どうして養鶏をやってみることにしたかというと、養鶏は、小規模農業の中でも一番、そして「畜産農業」の中でも一番、ローリスクで、安定収入を得られるからなのです。
一方「園芸農業」といえば、ケニアの経験で言うのなら、何を栽培しようと、リスクが非常に高いものです。なぜなら、自然災害(干ばつ・台風)による全滅のリスクだけでなく、天候の不順、病虫害、土壌の養分、日々激変する市場価格など、様々な条件が重なり、収穫後までどれだけの収入が得られるかわかりません。
こんなことを言うと、「じゃあ、農家は養鶏をやればいいんですね!」と結論づけてしまう人もいるのですが、小規模農業というのは、そんなに単純なことでもないのです。
ポートフォリオ戦略で勝つ。小規模農家のお手本
例えば、私に養鶏を教えてくれたマイケル・ンジョロゲ氏は、鶏を100羽ほど、乳牛を2頭、2エーカーに園芸作物を栽培しながら、家計を支えています。
彼はケニア中央部・ライキピア郡の小規模農家であり、このエリアの農家はケニアの中でも、農業収入が高いことで知られています。ざっくり言えば、農業に適したケニア西部地帯で農業を営む小規模農家に比べて、3倍は儲けているでしょう。そんな彼に、以下のような質問をしたところ、こんな答えが返ってきました。
1. 養鶏・乳牛・園芸作物からの収入は、どのくらいの割合?
だいたい、1:1:1くらいかな?よくわからない。
2. このうち、一番安定しているビジネスはどれ?
養鶏。一番楽だし、問題が少ない。
3. じゃあ今後収入を伸ばしていくのに、やっぱり養鶏に投資したい?
養鶏だけっていうのも良くない。そもそも養鶏を拡大できるほどの土地を持ってないしね。それに、養鶏が一番楽とは言ったが、僕たちの生産する12円の卵に対して、ウガンダからの卵が5円で入ってくる。簡単には良い価格でたくさん売れない。4−5箱(1箱24個)の卵を数週間売れない時だってあるのだから。
4. 3つのビジネスのうち、どれが一番好き?
どれも差をつけられない。どれも好きなんだ。それに、やっぱり大切なのはバランスなんだよ。乳牛だって、雨の降らない時期は食べ物が減って、ミルクを出さなくなったり、死んだりする。園芸農業は大変だけど、自分の土地を持ってるんだから、作物を植えなくてどうする?現にアルファジリと契約したニンニクを植えているじゃない。牛の餌(ネピアグラス、とうもろこしの茎葉など)も育てられるしね。
なんとすごいことでしょう。
彼は「農業のポートフォリオ戦略」をもって、農畜産物の種類と割合を決め、リスクを相殺しながら収益源を確保し、家計を支えているのです。
最も貧しい農家たちは、彼にどう近づけば良いのか
ンジョロゲ氏のような思考と実行力は、特に西部の、より貧しい小規模農家にとって、モデルケースだと言えるでしょう。
ではより貧しい小規模農家たちは、どうやって彼の収入レベルに達すれば良いのでしょうか?
彼と全く同じポートフォリオを組むことでしょうか?
必ずしもそうではありません。
例えばケニア西部、キタレの農家たちは、ケニアの他の地域よりも、大きな土地を持っている割合が多いのですが、植えているのは安いトウモロコシが主要作物だといいます。トウモロコシのように「最も簡単で主食の」作物を栽培する農家たちにとって、急に珍しい高価格の作物をマスターするのは非常に難しいことです。
説明しにくいのですが、これは私が5年間、ミゴリの農家に指導してきて実感していることです。もし彼らがあくまでトウモロコシを主要作物とするのなら、新たに彼らがすべきビジネスは、養鶏よりも、圧倒的に高品種の乳牛を用いた酪農業の拡大です。1エーカーのトウモロコシは、2頭の乳牛にとって、1年分の十分なエサです。トウモロコシの残渣を利用して乳牛を育てることで、エサ代のコストをかけずに収入を伸ばすことができます。
初期投資資金がなく、乳牛を買えない、もしくは低品種の安い乳牛しか買えず結果的に収入の低いままの農家が、高品種の乳牛を手に入れられたとしたら、これは収入を上げるために最も効果的な解決策と言えると思います。
小規模農家たちは、自分のポートフォリオ形成をどうやって決めればよいのか?
このように、小規模農家が農業をどうポートフォリオ形成するか?は天候・農家の教育レベルや技術力・市場などに大きく影響を受けるため、正解はその地域にいる人々が、自分たちに合ったものを選び取り、適応させていくことが一番だと私は考えています。
その農家のポートフォリオ戦略を成功させるために、アルファジリが展開しているソリューションが、「アルファチャマ」と呼ばれるプラットフォームです。アルファチャマの基盤は、定期的に集まって地域の問題を話し合ったり、共同貯蓄・購入したり、組合内マイクロファイナンスなどを行う近所の10〜15人からなる小組合です。
基本的に、アルファジリはこの「アルファチャマ」グループに対して農業に関わる様々なサービスを提供していくのですが、「アルファチャマ」がプラットフォームであるべき理由はいろいろあります。
アルファチャマのモデル図
例えば、
・アルファジリ社員のオフィサーや、信頼できる仲間と考えながら問題解決をできる(教育を受けていない農家が一人で決断するのはむずかしい)
・農業のリスクや債務を一人で背負うのではなく全体で背負うため、独りでコケない
・技術・知識・資材などの財産を共有するため、低コストで多くのものを得られる
・小単位であるがゆえ、一人ひとりにとって、その環境にとってふさわしい農業のありかたを実現できる
といったものです。
私たちアルファジリの面白さは、他の競合となりうる生鮮野菜流通業者、養鶏業者、牛乳加工業者、マイクロファイナンス機関、農業資材販売業者のように、まったくの別組織が、各組織ごとに農家と取引するのではなく、アルファジリが単体で地域一帯の小規模農家を包括し、その農家に合った暮らしをデザインするところなのです。
現在アルファジリは26のアルファチャマを展開しています。農産物流通業によって農家の作物販売先を担保しながら、自社の利益を創出しています。
今後アルファジリは、より小規模農家の暮らしを自在にデザインできる存在となるため、アルファチャマを軸とした事業拡大として、以下のような計画をしています。
・農産物流通事業により事業黒字化を達成(2019年8月まで)
・はちみつの生産と高付加価値販売により、アルファジリの収益性を大きくのばす(2019年8月から)
・灌漑設備投資事業により、農家の、園芸農業からの収入を大幅に伸ばす(2020年から)
・マイクロファイナンスと畜産をつなげ、畜産による農家の収入を大幅に伸ばす(2020年から)
アルファジリの目指す社会像とは
アルファジリは、このように事業を拡大させながら、何を目指しているのか?
私たちの目指す姿について、以下に記しておきたいと思います。
『小規模農業は世界の食糧生産の大半を担い、「小規模農業は家族農業」といわれるほど家族の絆を深める幸福度の高い仕事であるにも関わらず、農家は経済的な貧困に苦しみ、最低限の安定した生活すら支えられない状況にある。この問題を、「アルファチャマ」という小規模農家のプラットフォームを展開することにより、農業収入の保障、金融アクセス、技術共有といった機会が公平に与えられるだけでなく、地域の農家が互いに学び合い、支え合いながら自立し、理想的な農業生活と地域を創造していけるようにする。』
最後に
私たちは、アルファジリが描く社会の実現のため、テクノロジーの力でパートナーを組める企業を探しています。
例1)自然災害のリスクをAIで予測→ 園芸農業のリスクを予測しながら、アルファチャマ会員が契約栽培に対して月給をもらえる仕組みを実現
例2)アプリ開発→アルファチャマ会員が、グループ内の金銭の動きや共有機材の利用記録などをわかりやすく、ペーパーレスで管理
アルファジリの描く未来に共感していただける企業からのお声がけ、お待ちしております!
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◆アルファジリの若き挑戦者たちの軌跡
□なぜアルファジリ?(From Tika 1/4)~アルファジリの若き挑戦者たちの軌跡(10)~
□アルファジリがミゴリで生きる意味(From Tika 2/4)~アルファジリの若き挑戦者たちの軌跡(11)~
□インターン生のわたしが成し遂げた3つのこと(From Tika 3/4)~アルファジリの若き挑戦者たちの軌跡(12)~
◆アルファジリの歩む道
□Vol.3: 正しい自信と努力によって、自力で貧困を乗り越えられる農家集団をつくる
□Vol.4: 収入が高ければ、進学率も高いか?ーケニア・ミゴリ郡とニエリ郡の比較
□Vol.5: 創業者ということ
アルファジリ
ケニア農家の貧困問題解決に挑む インターンシップ募集
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